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2007-06-12 15:25

わが国提案の地球温暖化防止策を全力で実現させよ

田島高志  東洋英和女学院大学大学院客員教授
 5月の東京での国際交流会議および6月のハイリゲンダム・G8サミットで安倍総理が発表した地球温暖化防止策の提案は、国際的に見て現実的であり、かつ理想にも近い凄い内容を持っている。わが国は、この提案を世界に詳しく広め、来年の洞爺湖サミットまでに世界の合意が得られるべく官民挙げて全力を尽くすべきであると思う。この提案の何が凄いかと言えば、第1に、環境保全と経済発展とを両立させる方策であること、第2に、各国が事情に応じて取り組む柔軟かつ多様性のある方策であること、第3に、この現実的な第1と第2の2点により、米国を含めた先進国も中国やインドを含む途上国もすべて参加し得る理想に近い方策であることである。

 京都議定書では、世界第2と第5の二酸化炭素排出国である中国やインドを含む途上国が排出削減義務を負っていないのみならず、世界第1の排出国である米国さえも経済成長に有害との理由で参加しなかった。京都議定書を継ぐ2013年以降の新たな国際的枠組は、この地球すなわち人類の将来を救うために世界すべての国が一致協力して取り組み得る内容にすることが不可欠である。今回わが国は、公害や石油危機を乗り越え、GDPを2倍とする中で石油消費を8%減少させた経験や、その過程で生んだ環境に優しいデザイン、製造、流通など世界最先端を行くわが国の環境技術を背景に、環境と経済を両立させ得る提案を行なった。しかも、すべての国が「共通であるが差異のある責任と能力」の原則の下で最大限の努力を行なうために、資金メカニズム、省エネルギー策、排出量取引、革新的な発電技術開発、次世代自動車普及などの具体策を盛り込んでいる。

 ハイリゲンダム・サミットで「2050年までに温暖化ガスの排出量を半減させる」という長期目標を今後真剣に検討する旨合意されたことは、わが国の提案実現への意義ある第一歩であった。これからは、その目標の具体化のための枠組構築が世界の課題である。それには今後の厳しい交渉と説得の努力が欠かせない。その際に数値目標の扱い方が一つの焦点であろうが、単なる排出総量規制ではなく、GDP単位当りのエネルギー消費量規制、あるいはエネルギーの種類別排出量規制などを含め、わが国の主張する柔軟かつ多様性のある枠組を如何につくるかの観点およびわが国の経験と技術を生かす観点からわが国が主導性を発揮するために最大限の知恵を絞る努力が極めて重要である。

 「美しい地球」を守るために新たな国際的温暖化防止枠組の構築に率先貢献することは、世界最高の環境技術を持ち環境立国を目指すわが国の責任であり義務である。それは、わが国の最も誇りとし得意とする分野であり、またとない程の重要な機会である。今回のわが国の優れた提案の実現を目指し、さらなる内容の詰めと世界に向けての理解と支持獲得に官民挙げて努力を傾注すべきであろう。
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