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2019-10-03 14:18

(連載1)近視眼的な政策が招く深刻な金融リスク

中村 仁 元全国紙記者
 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が、トランプ大統領の強引な圧力に屈して、渋々、政策金利を0・25%下げました。10人の理事のうち3人が反対票を投じました。さらに金利を下げることには、慎重論がもっと強いようです。大統領は「根性なしで先見性がない」と、ツイッターで露骨な批判、暴言を吐きました。米国では相手が大統領であっても、自分の主張をきちんと表明します。夏頃、歴代のFRB議長らが連名で「トランプに屈するな」という声明を出しました。日本では、首相に任命権を握られている日銀の正副総裁、審議委員の見解は、まず一致です。日銀OBからも古巣批判は滅多に聞かれません。それが、元副総裁(日興リサーチセンター理事長)が異次元金融緩和策を強烈に批判する報告書を出したのです。
 
 政治権力者は「選挙ファースト(選挙第一)」で、景気や株価維持が最大の目標です。トランプ氏が自ら仕掛けた米中関税戦争の影響で景気停滞の懸念が強まり、株価は波乱含みです。来年11月の大統領選を控え、当落が五分五分のトランプ氏は焦っているのです。それがFRBに対する暴言を招いています。政治家は目先のことを最優先します。一方、FRBのパウエル議長らは「経済・金融の体質は08年の金融危機(リーマンショック)より悪化している」、「失業率3%台で、半世紀ぶりの低さ」、「物価上昇率も2・4%と高い」との見方です。彼らは中長期的な視点を最重視しており、「政治的思惑にひきずられてはならない。大統領の圧力に屈していたら、米国経済に悪影響を与えてしまう」というのが、本音です。
 
 だから、中央銀行の中立性(政治からの独立性)が不可欠なのです。日本ではデフレ対策の際、政府・日銀共同声明(2013年)が作成され、日銀の政権からの独立性は消えました。そんな折、日銀副総裁だった山口廣秀氏(08-13)が財政制度審議会会長だった吉川洋氏(東大名誉教授)と連名で「金融リスクと日本経済」というタイトルの報告書を発表(17日)、一石を投じました。
 
 「金融リスク」とはバブルのことです。「米国の金融リスクが高まっており、19年末から20年にかけて破裂する」との予想です。日本への影響はどうか。深刻です。「世界金融危機(08年、リーマンショック)を上回る可能性は大きい」、「日銀の超金融緩和政策により、金融機関の収益力、体力(利ざや)が低下しており、海外からのショックに対し、脆弱になっている」と指摘しています。両氏の報告書は率直です。(つづく)
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