国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2019-08-20 12:24

(連載1)WTOパネルでも、決着はつかない

緒方 林太郎 元衆議院議員
 日本による対韓国輸出強化は、WTOの紛争解決了解におけるパネル手続きに行きそうですね。韓国がその方向で準備しているようです。WTOの紛争解決了解における第一審だと思っておけばいいでしょう。いわゆる徴用工案件では、韓国が日韓財産請求権協定による仲裁手続きをすべてボイコットし、恐らく今後あると思われる国際司法裁判所手続きにも乗って来ないでしょう。一方、WTOのパネル手続きにおいては、設置、パネリストの選任等を拒否し続ける事で手続きの進行をブロックする事が出来ません。どんなに日本が動かなくても、パネルは設置され、そして審理が始まります。正確に言うと、一度は日本(被申立国)が拒否の意思を示す事は出来ますが、二回目にはほぼ強制的にパネルが設置されます。しかも、パネルの報告書(判決のようなもの。法的拘束力あり。)を拒否する事も事実上、出来ません。
 
 いわゆる徴用工の件は韓国がピクリとも動かない事ですべての仲裁や裁判手続きが止まり、日本の輸出管理手続強化については、日本が動かなくてもほぼ自動的にWTOの紛争解決手続きが進んでいくのは不公平だと思う方は多いでしょう。「何故だ」と問われると答えるのが難しくて、「それぞれの組織や協定の作りがそうなっている。」としか言いようがありません。
 
 紛争解決手続のパネリスト(裁判官のようなもの)は個人の資格で選ばれるとなっています。どういう国籍のどういう人が来るかを事前に想定する事はかなり困難です。特定のパネリストを拒否する事は出来ますが、長々と拒否し続けることは出来ないことになっています(最終的にはWTO事務局長が指名する事になる。)。そして、パネリストの任命から報告書まで「原則」6ヶ月となっています。ただ、近年長引く傾向にあります。
 
 これまで書いてきましたが、私はパネル判断をそう楽観視していません。拙稿『日本の措置はGATT条項に整合するか』(2019年7月12日e-論壇「議論百出」)でも述べております通り、安全保障の枠内で取られた措置だと言えば、すべてが正当化できるようにはWTOルールは出来ていません。輸出管理制度は「(正当化される)非関税障壁」なので、それがすべての国に公平、公正な形で運用されているかどうかが問われるわけです。(つづく)
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム