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2019-06-06 11:47

(連載1)米国依存の日本、日本依存の米国

中村 仁 元全国紙記者
 トランプ米大統領が新天皇の国賓として来日し、安倍首相とは通算11回目の首脳会談が行われました。日米の蜜月関係という表現は平板すぎ、「日本は米国依存」を深め、「米国もまた日本依存」に傾斜してきたというのが日米関係の本質です。メディアは「おもてなし外交」「対米追従外交」「恩を売られた日本」(朝日新聞)という感情的なレベルから卒業したい。米国の力を非力な日本外交の補強に使う。日本の補強にするつもりが、日本のほうが米国の補強に取り込まれるのを防ぐにはどうするか。そうした視点がほしい。
 
 トランプ氏の強引な外交手法に中露が反発するのはもちろん、欧州などの友好国とも対決姿勢が目立ち、米国と友好関係を維持している国は、日本など少数になりました。欧州では、メイ英首相が今月の辞任を表明し、メルケル独首相は21年の退任を明らかにしています。マクロン仏大統領は欧州議会選挙で極右政党に負け、2位に後退しました。欧州の政治は混乱の度を深めています。
 
 「世界には200近くの国が存在する。日本は大国以外ではトップの座を占めている」と、米国戦略家、国防アドバイザーのルトワック氏は日本で出版した著書(戦争にチャンスを与えよ、文春新書)で指摘しました。「大国以外」とは、米中露を除くという意味です。日本に何度も来日し、首相とも会談しています。「内容については守秘義務がある」と。同盟関係の深化でも助言したのでしょう。トランプ外交が対立国を増やしているなかで、トランプ氏に近づいてくる安倍首相の日本はありがたいと、思っている。トランプ訪日を報じたロシア紙は「安倍首相はトランプ氏にとって大国で唯一の友人」と、表現しました。「唯一の友人」とは、トランプ氏の孤立を示唆しています。
 
 だからこそ米国を日本にひきつけ、非力な外交力の補強に使うことです。米国有数の政治学者、コンサルタントのイアン・ブレマー氏(ユーラシア・グループ主宰)は日本の新聞に寄せたコラムで、日本を激賞しています。「経済がほとんど成長していないのに、国家がむしばまれて分裂していない唯一の国だ」と、持ち上げています。米国にとって、欧州は脆弱になっているだけに、日本は無視できない国になっている。「米国の日本依存」です。米国の政治状況に通じている元官僚は「米国の対立国が増えているだけに、日本への注目度は高まっている」と、言います。米大統領の4日間の訪日の背景でしょう。(つづく)
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