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2019-05-20 10:47

平成30年は失われた30年

大井 幸子 国際金融アナリスト
 私は平成(1989~2019年)の大半を米国で体験した。詳しく言うと、1985年から2007年半ばまでの大半をニューヨーク、それ以降は東京で過ごしてきた。米国を中心に、世界が大きな変化に見舞われた平成時代。日本は、文字通り平和な30年を享受した世界で数少ない国だった。平成の時代に、日本がガラパゴス化し、世界の流れから何周も乗り遅れたというのは確かである。私が初めて渡米した1985年には、日本は世界最大の債権国だった。あれから日本の地位がどれほど凋落したことか。事実を見てみよう。国際競争力に関して、現在、日本は25位(IMD国際経営研究所)。香港や、シンガポール、中国、台湾、マレーシアよりも下位に位置する。また、労働生産性について、日本はOECD加盟国中20位(日本生産本部)。企業時価については、日本でトップのトヨタは世界で45位。トヨタより上位には中国企業7社がある。加えて、大学ランキングでは、日本でトップの東大が、世界では42位。東大よりも清華大学、北京大学、シンガポール大学が上位にランキングされている。

 こうしてみると、日本は中国やシンガポールにも抜かれている。日本国内だけで「モノづくり」や匠の技を誇っても、「ジャパンアズナンバーワン」は世界ではとっくに過去の栄光になっている。そして、このまま何もせず無策のままで次の30年をズルズル行けば、確実に国も企業も教育レベルも、日本は二流から三流、四流へと転落してしまう。あと20~30年すれば、年金が十分でない高齢者が増え続け、国民は総体的な貧困に苦しむだろう。何しろ、年金が401k(確定拠出型)に切り替わり、このままゼロ金利が長引けば、貯蓄すれど退職後の資産が不十分なまま、長い老後を迎える高齢者が増え続けることになる。その負担は若い世代に降りかかり、国民の総体的貧困化が長期に渡って続く。労働生産性が低いまま労働人口が減少し、国民が貧しくなればデフレ・スパイラルは続く。その間、政府だけが税金で肥え太り、有能な企業は国外に出て行くから「空洞化」が進むだろう。国力は目に見えて衰えて来る。

 こうしていったん一等国の地位から滑り落ちれば、回復はなかなか難しい。それほど追い上げて来る新興国は多く、グローバル化時代は競争が激しいのだ。企業でも重要な戦略を間違えれば衰退の一途を辿るし、国家もまた同じである。ベネズエラは超インフレで破綻の淵にあるし、また、シリアは政治的な混乱から内戦で外国が干渉し、国民は難民となって世界を放浪している。これは他人事ではない。国の安定がなければ企業の繁栄はないし、国民の暮らしの安心もない。昭和は戦争の時代で、日本は敗戦から立ち上がり、70余年かけてやっと一等国の地位を掴んだ。しかし、平成の30年間で、日本は経済・金融面で再び敗戦国となったと私は見ている。米国の資本市場と比べると日本は桁違いに縮こまってしまった。

 そして、今後日本はどうやって平和と繁栄を保っていくのか?ガラパゴス島でもなんとかやっていけるさ、という島国根性を捨てて危機意識を持たないと、国家の正当性を奪い取られ、日本が日本でなくなる日が来るかもしれない。21世紀に令和が最後の年号にならないことを祈る。
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