国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2019-03-13 10:55

情報革命と中国本土

真田 幸光 大学教員
 私は、2012年にドイツがIOT化を念頭に「第四次産業革命」のコンセプトを発表し、また、そのスタンダードとして「ドイツ版インダストリアル4.0」のコンセプトをいち早く発表し、国際標準化機構(ISO)規格に替わる、新たなものづくりのスタンダードを示そうとしていることを以前より注視しています。これにより、「世界的なスタンダードの変化」が見られるのか否かは大きな注目点です。更にまた、IOT化の進展を通して、「情報の集中、特にビッグデータ化を通した情報の集中が進めば、情報を所有する者が支配する側に、情報をコントロール出来ぬ者が支配される側に分かれ、その結果、格差は更に広がり、かつ、その格差が固定的となり易くなる。」とも考えております。

 さて、こうした中、「中国本土のグーグル」と呼ばれているネット検索大手の百度(バイドゥ)が、3年間で10万人のAI関連人材を養成するという計画を発表、動きはじめています。即ち、こうした世界の動きに中国本土も参戦してくることを表明したようにも聞こえます。何故ならば、こうした動きは、習近平国家主席が陣頭指揮を取る汎国家的「技術蜂起」戦略の一環と見られているからです。具体的には、昨年3月だけでも米国マイクロソフトから5人のAIエンジニアが中国本土企業へ移籍、「人海戦術」を思わせる大規模な人材投資を通して5年以内に米国に追いつき、世界第1位になるという戦略を示しています。また、AIは、一国の産業競争力はもちろん安全保障・軍事力までも左右する中心技術で、単なるビジネスの視点からだけの動きとは見られていません。既に、中国本土はおよそ7億人のモバイルユーザーが情報交流する世界最大のビッグデータを保有しており、これが更に拡大することはほぼ間違いありません。地球上のどの国もかなわないビッグデータの基盤の上で政府と企業の大規模な投資が結びつけば、米国に追いつくことは不可能ではないと考えられるのです。

 また、実際に2017年には、中国本土のAI特許出願件数はおよそ1,300件となっていると言われ、米国より4倍以上も多くなっており、中国本土のAI技術レベルは、2015年の時点で米国より2.8年遅れていると評価されていましたが、2017年にはその格差を1.9年に縮めたとまで言われています。更に、AIだけではなく、モバイル経済のようなITサービスやドローン産業では中国本土は例えば韓国よりもずっと先行し、世界の最先端を疾走しているとも言われています。そして、バイオ・遺伝工学をはじめとする大部分の次世代産業技術でも、中国本土の実力は増しています。

 こうしたことから、第四次産業革命の覇者がもし、中国本土となれば、世界の覇権は、「英米から中国本土へと移る。」という可能性を、私たちは、念の為、留意しておかなくてはならないと思います。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム