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2018-10-09 16:08

玉城沖縄県新知事誕生と日本の安全保障

加藤 成一  元弁護士
 基地問題が最大の争点とされた注目の沖縄県知事選挙は、9月30日投開票され、共産党、社民党などがつくる「オール沖縄」が推し辺野古移設絶対反対、普天間飛行場無条件返還を主張する前衆議院議員の玉城デニー候補が、自民党、公明党などが推す前宜野湾市長の佐喜眞淳候補を約8万票の大差で破り当選した。自民党、公明党などは総力戦を展開し接戦が予想されただけに、予想外の大敗にその衝撃は計り知れないであろう。この選挙結果により、「沖縄の民意」は辺野古移設反対であると認めざるを得ない。

 しかし、民主国家において「民意」は尊重されるべきであるが、国家の安全保障は「民意」のみによって左右されてはならないであろう。なぜなら、「民意」とは、いわばその時々の国民の感情であるが、沖縄県の尖閣諸島奪取を狙い領海侵犯を繰り返す中国の海洋進出など日本を取り巻く厳しい国際情勢や安全保障環境、日米同盟による対中抑止力の維持などをすべて総合的、客観的、冷静に判断したうえでの「民意」であるとは必ずしも限らないからである。選挙戦では、玉城候補は「沖縄を日本からも米国からも取り戻す」などと絶叫し、辺野古移設絶対反対、米軍普天間飛行場の無条件返還を公約したが、その方法としては父親が米国人であり、これから米国と交渉すると主張するだけであり、実現可能な具体的方策を一切提示していない。単なる選挙対策としての、具体的裏付けのない「スローガン」に過ぎないと言えよう。のみならず、玉城候補は沖縄県民でありながら、中国による沖縄県尖閣諸島奪取の危険性や沖縄駐留米軍による対中抑止力の維持については一切無視し言及していない。そして、ただひたすら「辺野古移設絶対反対」「普天間飛行場無条件返還」を叫ぶのみであり、極めて無責任であると言えよう。

 米国議会の諮問機関である「米中経済安保調査委員会」の2016年3月15日付け報告書には「中国軍部は沖縄駐留米軍の遠隔地への兵力投入能力を恐れ、その弱体化を図っている。基地反対運動を煽る政治工作員を沖縄に送り込み、米日両国の離反を図っている。政治工作員は基地反対集会やデモにも実際に参加している。」などと記載されている。上記報告書は、中国軍部の内部情報や沖縄現地の基地反対運動の状況を調査し、現地の情報収集の結果に基づくものであり信頼性が高い。そうだとすれば、玉城候補が主張する辺野古移設絶対反対や代替施設のない無条件の普天間飛行場の返還は、日米同盟による対中抑止力を低下させ、尖閣諸島奪取を狙う中国を利することは明らかである。現に10月1日付けの中国紙・環球時報は9月30日に実施された沖縄県知事選について、「在沖縄米軍基地撤去を掲げる玉城デニー氏が当選した」とし、「沖縄人民が日米に重大な勝利を収めた。」と報じ、歓迎しているのである。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設については、すでに2016年12月20日の最高裁第二小法廷判決(民集70巻9号2281頁)によって容認され法的に決着がついている。日本政府は日米同盟による対中抑止力を維持強化するため、この最高裁判決に基づき辺野古移設を推進すべきである。歴代自民党政権はこれまで沖縄の振興と基地負担軽減に取り組んできた。日本政府としては、すでに返還が実現した2016年の米軍北部訓練場4000ヘクタール返還、2017年の米軍普天間飛行場のうちの4ヘクタール返還、同年の浦添市キャンプキンザ米軍補給基地の一部返還に加え、今後返還される予定の米軍キャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧、米海兵隊牧港補給基地、那覇軍港などの返還を確実に進め、沖縄の振興と基地負担軽減に全力を傾注すべきである。
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