国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2018-09-28 11:21

南北首脳会談とアメリカの思惑

岡本 裕明  海外事業経営者
 韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長の二度目の首脳会談は報道からすると成功裏に終わったように見えます。トランプ大統領もあらかた歓迎しているようでこのあと、文大統領とニューヨークで直接、会談内容を確認するようです。今回の会談、実質的な終戦宣言と言われています。両国間は現在、休戦のままでいつでも戦争に戻れる状態にありますが、それを終結させることが今年の初めからの主たるテーマとなっています。休戦協定は国連軍、中国、北朝鮮で署名されていますので今回、本物の終戦協定が締結されるならば誰が署名するのか、という点が着目されていました。米韓朝ないし、米中韓朝のどちらかの組み合わせと言われているのはこのあたりが背景ではあります。一部報道には韓国は国連軍に組み込まれていたので当事者能力がないのでは、という見方もあります。ただ、喧嘩をしている当事者の片方が親や親せきが本人に代わって和解の署名をした、ではおかしなものですから韓国は当事者になりえるとみています。

 さて、今回、大きく進捗した南北間協議であまりスポットが当たらなかったのが中国であります。実際に会談後もほとんどボイスが聞こえてきません。何故でしょうか?北朝鮮と中国は歴史的背景を含め、両国は切っても切れない関係とされています。一方、中国と韓国は必ずしも親近感あふれる状態ではないのは韓国とアメリカの関係がその背景にあるからです。中国からみれば北朝鮮はアメリカの影響を強く受ける韓国との「緩衝帯」としての役割があったはずです。ところが南北関係が改善し、将来的に国交回復、ないし、南北統一となり、その国家体制が中国共産党の欲するスタイルと相違していれば中国北東部は朝鮮半島からの好ましくない影響を受けやすいことになってしまいます。アメリカが文大統領を利用する形でアメリカの意向を反映させながら硬軟取り混ぜて北朝鮮外交を進める方針は確信的政策です。となれば3度も中国を訪れ、習近平国家主席と会ったその意味は何だったのでしょうか?

 先日、ある中国専門家の方と会い、習体制の現状について意見を伺ったのですが、弱体化しているとは思えない、と発言されていました。私は違うと感じています。少なくとも金正恩委員長は習近平氏の方を向いていないように思えます。金委員長は体制の保証を条件として掲げていますが、この体制とは共産主義体制とは思えないのです。単なる金一族の独裁体制であって、イデオロギーまで踏み込んだものではないとみています。では、「なぜ、アメリカがそれを許容するのか」ですが、GHQの政策判断材料となったあの「菊と刀」的な発想をトレースしているのではないかと思います。つまり、国民が金一族を国家の象徴としているため、金体制の崩壊は国家の制御を失うと考えている節があるのではないでしょうか?

 もう一つ、アメリカが北朝鮮外交を進める本意は対中国外交に他ならないとみています。上述のように朝鮮半島にアメリカの色が強く押し出される体制を作ることで中国国境に強いプレッシャーを与えるのであります。中国は東部が海に囲まれているため、海軍の強化を進めています。但し、唯一、朝鮮半島にだけは陸続きの国があるのです。ここをアメリカが間接的に抑えたならば中国にとっては脅威以外の何物でもないでしょう。北京も遠くありません。これがアメリカの進める本当の外交政策ではないかと私は見ています。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム