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2018-05-07 10:16

(連載1)尖閣諸島を守るための基本方策

佐藤 有一  軍事評論家
 沖縄本島の西410kmの位置に尖閣諸島があります。5っの無人島と3っの岩礁から構成されている日本の領土で、日本が実行支配しています。尖閣諸島は日本の領土ですから日本が実行支配しているのは当然ですが、あえてそれを明言しなければならないのは、中国と台湾が尖閣諸島の領有権を主張しているからです。2010年に中国漁船による海上保安庁の巡視船への衝突事件とその後の中国国内の日本企業に対する破壊行動やレアアース資源の輸出禁止などの不当な処置が行われました。そして現在に至るまで、中国海警局の公船による尖閣諸島周辺の接続水域での航行、領海への侵入が繰り返されています。これは尖閣諸島の領有権を主張するために、実行支配しているという実績を無理矢理つくろうとする行動と見なすことができます。しかもその背後には中国海軍の軍艦が控えています。尖閣諸島付近の日本領空に中国軍の航空機が接近したために、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進する事態も頻繁に発生しています。また、これらの中国軍の行動が中国の流動的な国内情勢によって変化し、尖閣諸島への侵攻にエスカレートすることも懸念されるところです。このような中国の挑発的な行動に対応するためには、いくつかの分野に分けた議論が必要と思われます。そこで、尖閣諸島を守るための基本的な方策を分野別にまとめてみましたので、ここに提言いたします。

 (1)歴史認識::尖閣諸島が日本の領土であるという証拠は歴史に刻まれています。領土に関する歴史認識は、どの国でも自国に有利な解釈がされていることでしょう。尖閣諸島に関する歴史認識も、日本と同様に中国にも自国の立場からの歴史認識があっても不思議ではありません。そのことは認めて、互いの歴史認識を議論していく中で、日本の歴史認識の正当性を主張していかなければなりません。1895年1月に日本政府は尖閣諸島を正式に日本の領土に編入しました。これは国際法上の領有権を取得することを認めた「先占の要件」に合致するものです。その後、日本政府の許可により、民間人が現地で水産事業を営みました。これは尖閣諸島に対する有効支配を示すものです。1968年に国連の調査報告で、尖閣諸島の周辺に石油埋蔵の可能性があると指摘されると、1971年に中国と台湾は尖閣諸島の領有権を主張しはじめました。1971年までは中国と台湾は尖閣諸島の領有権を主張していなかったのですから、それまでは日本の領土であることを認めていたことになります。このような中国と台湾の領有権の主張は、石油資源の取得を目的とした身勝手な主張であることは明白であり、日本としては到底認めることはできません。

 1972年5月に米国との間で沖縄返還協定が発効、尖閣諸島も含めて沖縄が日本に返還されました。1972年7月の日中国交正常化交渉で、中国側より「尖閣諸島領土の棚上げ」が提案されました。日本側は特に反論はしませんでしたが、正式に合意した訳ではないので、それについて記述した外交文書は存在していません。ところが、1992年2月に中国は尖閣諸島を中国領土とする国内法を勝手に制定しました。それ以降、尖閣諸島周辺の日本の領海に、中国の公船を繰返し侵入させるなど、中国自らが提案した「棚上げ」を否定するような行動をしてきました。この時点で、中国からの「棚上げ」提案は消滅したと見做さざるを得ません。2012年9月に日本政府は尖閣諸島を国有化しました。個人が所有していた島を日本政府が購入したものです。尖閣諸島は日本の領土ですから、これを国有化することに何の不都合もありません。中国は、この日本による国有化が「棚上げ」の一方的な破棄と非難しましたが、すでに中国側から「棚上げ」を否定しているのですから、矛盾した主張と言わざるを得ません。

 このように、中国は日本の立場からは受け入れることができない歴史認識を根拠にして、尖閣諸島の領有権を主張しています。これからも、中国側からの歴史認識を有利に展開しようとして新しい歴史認識が主張されることがあるでしょうが、日本としてはその都度それに反論していかなければなりません。しかしながら日本国内でも、尖閣諸島の領有権については様々な意見があるようです。もし、貴方が日本側の歴史認識に疑問を感じたとすれば、それを指摘すると同時に、それを修正あるいは代替するための対案を提示すべきです。それをせずに批判のみに終始すれば、中国側に利用されるだけの存在になってしまいます。あらゆる機会をとらえて、国際社会に日本としての歴史認識が正しいことを発信し続けることが肝要です。(つづく)
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