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2018-03-14 10:46

追い詰められた北朝鮮

加藤 成一  元弁護士
 3月6日韓国大統領府は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅大統領特使団とのピョンヤンでの会談で、(1)4月末に板門店で南北首脳会談を行うことを合意し、(2)北朝鮮が軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば核を保有する理由が無いと表明し、(3)金正恩委員長が4月からの米韓合同軍事演習を例年通り行うことに理解すると表明し、(4)北朝鮮は対話期間中の核・ミサイル実験を凍結し、(5)北朝鮮は米朝関係正常化のため米国と対話を行う用意があると表明し、(6)南北首脳間でホットラインを設置し、首脳会談前に電話会談することで合意した、と発表した。

 予想外の展開とは言えよう。しかし、上記(2)の「軍事的脅威の解消」や「体制の安全」は、すべて北朝鮮側の判断一つにかかっているから、核放棄の条件として韓国からの米軍撤退などを要求してくる可能性がある。北朝鮮の真意を見極める必要があろう。ただ、上記の各「合意」は、これまでの北朝鮮の強硬姿勢からすれば、一定の譲歩とも見れなくはない。そうだとすれば、北朝鮮が今なぜ譲歩したかであるが、第一の理由は、国連をはじめ中国、ロシアを含め諸外国が実施している長期の経済制裁で次第に「じり貧」となり経済的苦境に陥りつつあること、第二の理由は、米国が昨年北朝鮮をテロ支援国家に再指定し、核関連施設等への限定先制攻撃である「鼻血作戦」(bloody nose)など軍事的手段による核問題の解決を排除していないこと、が考えられる。北朝鮮にとっては、何よりも第二の理由を最も恐れているであろう。なぜなら、3月の五輪開催中こそ米国による先制攻撃を免れるが、五輪が終わればその保証がなくなるからである。このことは北朝鮮の金正恩委員長にとっては恐ろしいに違いない。したがって、北朝鮮による上記各「合意」の主たる理由は、米国による先制攻撃を免れ、その間に核・ミサイル開発を急ぎ完成させることにあると言えよう。

 北朝鮮が「合意」した主たる理由が上記の通りとすれば、トランプ米国大統領の核問題解決のためには軍事的手段を排除しないという、これまでの対北朝鮮政策は間違っていなかったと言えよう。北朝鮮は今回だけでなく過去にも米国との間で軍事的緊張が高まると、韓国や日本に対して融和姿勢を示してきた。日朝首脳ピョンヤン会談で金正日委員長が拉致を認め謝罪した2002年当時も、米国は北朝鮮をテロ支援国家に指定しており、当時のブッシュ米国大統領が北朝鮮を「悪の枢軸」と名指し、朝鮮半島の軍事的緊張が高まっていたのである。今回も同様であると言えよう。米国は、これまでイラクやリビアのような独裁政権を軍事力で倒してきたから、金正恩委員長は米国による攻撃を恐れているであろう。したがって、米国としては、北朝鮮に核放棄をさせるためには、「対話」をするにせよ、引き続き軍事的選択肢を排除すべきではない。

 今回北朝鮮が敢えて「合意」し一定の譲歩をしたのは、いまだ米国本土を完全に射程に収めた核搭載のICBM(大陸間弾道ミサイル)が未完成で実戦配備をしていないこともその理由の一つであろう。もし完成し実戦配備をしていれば、このような「合意」はしなかった可能性がある。その意味で、今回の「合意」は北朝鮮が追い詰められた結果だとも言えよう。したがって、北朝鮮に核を放棄させるには米国本土を完全に射程に収めた核搭載のICBMが完成し実戦配備がされるまでの間に限られるのであり、今後予想される「南北対話」や「米朝対話」が、北朝鮮に核・ミサイル開発を完成させる時間的余裕を与えるものであってはならないであろう。
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