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2018-02-20 09:12

米国・トランプ大統領の政策姿勢と北朝鮮について

真田 幸光  大学教員
 私は、米国のトランプ大統領は、米国の国際社会に於ける立ち位置が悪化し、世界に対する米国の威信は低下していると、大統領として認識している人である」と見ています。そして、だからこそ、例えば、国際交渉に於いては、各国を一堂に介して議論してもアメリカの意向は響き渡らないと判断、しかし、その反面、一対一で対峙すれば、まだ、米国に敵う国は無いとも判断し、「集団的交渉=Multilateral Negotiationではなく、先ずは二国間交渉=Bilateral negotiationを優先、一通りの道筋をつけてから集団的交渉に戻り、国際秩序の再構築を図る」と言う交渉戦法に切り替えてきていると見ています。

 しかし、いつまでも、米国の威信低下のトレンドのままであってはならないと、対応策も打ち始めています。こうした中、そのトランプ大統領は、米国の連邦議会で行った初の一般教書演説の中で、「新たな米国の時代が到来する」と訴えました。そして、改めて、経済再生や安全保障の強化を打ち出しています。私の視点からすれば、実にトランプ大統領らしい納得のいくコメントであります。そしてまた興味深い点は、こうした延長線上で、米国の威信を世界に対して見せつけやすいことからであろうと思われますが、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に厳しい態度で臨む「米国の決意」も強調しているのであります。

 トランプ大統領は、更に、この北朝鮮の核・ミサイル開発については、「ごく近いうちに米国の本土にとっても脅威となり得る」と意図的とも思えるほど、強い危機感を少なくとも表面的には示し、米国内外に北朝鮮問題を注目するように仕向けた上で、「過去の米国政権が犯した過ちを繰り返しはしない」とも述べて、北朝鮮に対して、最大限の圧力をかけ続けていく方針を改めて明確にしています。また、米国議会の議場の傍聴席には、北朝鮮で拘束され、解放後に亡くなった米国人学生オットー・ワームビア氏の両親や北朝鮮当局に拷問されたという脱北者の男性を招待するなどの手の込みようで、「北朝鮮の残忍な独裁体制以上に自国民を徹底的かつ容赦なく抑圧してきた体制はない」とコメントし、北朝鮮の金正恩体制を徹底的に非難もしました。

 一方、この演説は約1時間20分にわたり、一般教書演説としては過去3番目の長さとなったとも言われていますが、一方で、多くの政策について、実現へ向けた具体的な道筋を示すには至らなかったとの厳しい批判もあります。こうした中、私は、トランプ政権の経済政策は、(1)宇宙航空産業とその延長線上にある防衛産業の発展強化策、(2)IoT社会を意識したAIなどをフル活用した次世代産業での比較優位の確立政策、(3)グローバル物流の根幹を抑えようとする政策の三本の矢がしっかりとワークし始めており、「米国の威信回復に向けた経済政策は進展し始めている」と見ています。しかし、私は、「米国政府が、米国の威信回復の為に、北朝鮮を必要以上に刺激してしまうと、その結果として万一、戦闘事態にでもなれば、日本にとっては大きな不利益を被る危険性がある」とも危惧しており、トランプ大統領の言動には注意をしています。それにつけても、こうした米国の動きを見て、北朝鮮政府は国連に対して、「米国の執拗な挑発行為をやめさせて欲しい」と訴える姿はむしろ冷静にも感じられます。
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