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2017-07-15 11:56

(連載2)鉄鋼の不当廉売課税

緒方 林太郎  衆議院議員(民進党)
 ただ、アメリカではこのアンチダンピングについては米国国内法で定められているので、通商代表部は議会から非常に厳しく言われておりガチガチのポジションです。よく米国との交渉をすると「いや、Congressとの関係があって」と議会をエクスキューズに使います。都合が悪くなると「Congress」の言葉を使ってきます。我々、日本の国会もそれに負けてはならないと思っています。どんどん我々側からも行政に対して、このアンチダンピングについては「ダメなものはダメだ」と言い続けていく必要があります。

 さて、このアンチダンピング、実は最近はアジア諸国の多用が目立ちます。中国の過剰生産問題+投げ売りもあり、東南アジアやインド等の各国ともアンチダンピング課税をよく使います。現在、日本企業にとっては(輸出がそれ程多くない)アメリカよりも、アジア諸国によるアンチダンピング課税の方が深刻な問題となりつつあります。これは日本企業にとって実に奇妙な結果となっており、「輸出先でシェアが増えるとアンチダンピング課税をすぐに打たれるので、シェアが増え始めると輸出量を調整する」という実態があると聞いています。ここまで来ると「公正貿易」ですらなく、完全に「管理貿易」の世界になってきています。

 現在は個々のケースに対応するしかないのですが、本来であればWTO・AD協定の改正が筋です。というのも、こういうルールものはマルチの交渉でやらないと意味が無いのです。例えば、アメリカが日本に対するアンチダンピング課税についてのみ制度を変える事は無理なのです。だから、世界全体でルールを改正する動きにしか乗れないはずなのです。今、二国間の自由貿易が百花繚乱ですが、実はそれでは対応出来ない事があるのです。こういうAD協定のようなルールであったり、農業の補助金削減のような話であったり、これらは何処まで行っても二国間やTPPのような協定ではやれない(やろうと思わない)のです。

 冒頭引用した外務委員会での質疑で、ちょっと外務省は腰が引け気味でした。トランプ大統領との関係を忖度して、今はあまり強いポジションを出しにくいのでしょう。だからこそ、国会側から厳しく本件は指摘していきたいと思います。日本の交渉官に「うちのDiet(国会)がうるさくて」と言わせるためにも。(おわり)
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