国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2017-07-04 14:35

コモン・ローについて

真田 幸光  大学教員
 私は第二次世界大戦以降の法体系、就中、国際金融分野の法の根拠は、今や英米法になっていると認識しています。そして、根拠法が英米法となれば裁判権も英米の裁判所に移され、実際に仲裁などの実務を行う際にはこうした状況をしっかりと理解しておくことの重要さは更に増していきます。そして、英国法の基本はコモン・ローとなっているということを私たちはまた、認識しておかなくてはなりません。

 コモン・ロー(common law)は、「多義的な概念である」と言われており、また、「英国法に於いて発生した法概念」とも言われ、中世以来イングランドで国王の裁判所が伝統や慣習、先例に基づき裁判をしてきたことによって発達した法分野のことを指しています。また、この場合はエクイティを含まない概念となるとされています。即ち、コモン・ローは、イングランドのコモン・ロー裁判所が下した判決が集積してできた判例法体系であり、これに対して、エクイティは、コモン・ローの硬直化に対応するため大法官(Lord Chancellor)が与えた個別的な救済が、雑多な法準則の集合体として集積したものとされています。

 そして、この概念によれば、「記録のない時代からイギリス人を律してきた慣行(usages)と慣習上の準則(customary rules)で成り立ち、私人間の正義(private justice)と公共の福祉の一般原理で補足され、国会制定法で変更を受ける場合がある」とされています。こうしたことから、コモン・ローは完成された理性(the perfection of reason)であり、「神の法」とされているのであります。更に、広義では、大陸法系の対概念として英米法系を示すものとして用いられています。更には、英国領またはその植民地であった歴史を持つ国々(アングロ・サクソン系諸国)に於いて主に採用されている法体系を指し、エクイティを含むとされています。

 コモン・ローは普通法と訳されますが、同じく普通法と訳される、ローマ法や教会法における「一般法」(ユス・コムーネ)、ローマ法を継受したドイツ法における「共通法」とは異なる概念となっていると言われています。また、教会法との対比では世俗法を、制定法との対比では不文法を指す用語でもあります。こうしたことを知りつつ、世界に於ける法治社会の現状と今後を更に分析していく必要があるかと思います。法治社会を生きることは大変です。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム