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2017-06-16 10:18

(連載2)NATOと米国トランプ大統領、そしてロシアと中国本土について

真田 幸光  大学教員
 そしてまた、ソ連の崩壊によりソ連の影響圏に置かれていた東欧諸国が相次いでNATO加盟を申請し、結果として、旧ワルシャワ条約機構加盟国としては、バルト三国を除く旧ソ連各国(ロシア・ベラルーシ・ウクライナ・モルドバ)を残し、その他、全ては、所謂、西欧圏に取り込まれることとなりました。そして、2000年代後半に入ると、アメリカが推進する東欧ミサイル防衛問題や、ロシアの隣国であるジョージア、ウクライナがNATO加盟を目指していることに対し、経済が復興してプーチン政権下で大国の復権を謳っていたロシアは強い反発を示すようになり、2008年8月にはグルジア紛争が勃発、NATO諸国とロシア関係は険悪化し、「新冷戦」と呼ばれるようにまでなりました。ロシアは2002年に設置されたNATO・ロシア理事会により準加盟国的存在ではありましたが、このようなことから、NATOとロシアは未だ緊張関係にあるとも見ておくべきかと思います。

 さて、こうしたNATOに対して、米国のトランプ大統領は、先般、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長と会談し、会談後の記者会見では、「NATOは、もはや時代遅れではない」と述べました。先の米国大統領選中からNATO不要論を繰り返してきたトランプ大統領の姿勢に、NATO加盟国は危機感を示していましたが、今回のトランプ大統領の姿勢の変化によって、国際金融市場には、「現状の世界秩序維持」と言う視点から、安心を与える材料の一つとなりました。具体的には、ストルテンベルグ事務総長をホワイトハウスで迎えたトランプ大統領の、「テロの脅威がNATOの同盟関係の重要性を強化した。イラクやアフガニスタンといったパートナーに今まで以上に協力して欲しい」と言う発言に繋がったと見られてもいます。

 そして、トランプ大統領は、これまでNATOについて、その存在意義を疑問視し、米国の拠出金負担が過剰で偏っているなど、不満を声高に繰り返していましたが、事務総長との共同記者会見で、その考えも変わったと表明しつつ、「事務総長と私は生産的な話し合いをもち、テロとの戦いでNATOが今まで以上に何ができるか協議した。ずっと前に私はその点について文句を言ったが、NATOは対応を変えテロと戦うようになった。NATOは時代遅れだと私は言ったが、もう時代遅れでなくなった。米国が帳尻を合わせてくれるだろうと依存するだけでなく、ほかの国々も公平に負担を分担すれば、全員がもっと安全になる」とコメントしたのであります。トランプ大統領は、こうした反面、モスクワにティラーソン国務長官を送り込み、プーチン大統領、ラブロフ露外相との会談も実現させています。この会談では、主にシリア問題について協議したようですが、まだまだ、NATOを脅威と認識するロシアを意識し、特に、ロシアのプーチン大統領が、「米ロ関係が悪化している」との認識を示していることなども受けて、NATOに対する警戒感が必要以上にロシアに出ないようにも動いているのではないかと思います。

 米国にとっては欧州との大切な架け橋であるNATOへの配慮もしつつ、ロシアを刺激し過ぎないようにも意識を払い、また、そのロシアが軍事的には中国本土に近寄り過ぎないように作戦を張り巡らし、更には、中国本土にNATOの絆を崩されないようにも警戒しながら、トランプ政権は巧みに動いていると思います。米英中露仏独と言った大国を含めた動きに、NATOと言う組織にも重ね合わせて、今後も動向を注視したいと思います。(おわり)
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