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2017-03-15 11:50

(連載3)米中の狭間で動く韓国の苦悩について

真田 幸光  大学教員
 しかし、韓国の悩みはこれに留まらないと思われる。筆者の見るところでは、例えば、柳副首相兼企画財政部長官が対米経済関係に関する苦悩の色を示しており、柳副首相は「対米黒字幅を減らすために努力する」と公言したものの具体策が示されておらず、米国トランプ政権からの圧力も一方で、今後は強まる可能性もあるのである。

 韓国政府関税庁が分類した97の貿易品目のうち、韓国が黒字を出したのは39品目、赤字品目の58品目であるが、自動車と部品の韓国の黒字規模は197億1,300万米ドルとなっていると伝えられており、全貿易収支黒字の84.8%に達する。更に、電子機器は73億3,200万米ドル、機械類は43億1,700万米ドルの黒字を記録しており、韓国が黒字を多く出した自動車産業などに対する米韓両国間の貿易不均衡解消がトランプ政権の大きな関心事となる中では、米国が優位性を持つ大型車が韓国では人気がなく、韓国製自動車は米国の中産層以下の階層を中心に価格競争力で高いシェアを占め、韓国製部品も米国企業に多く輸出されているという構造を、短時間に変えることはできないであろうと見られているのである。

 トランプ政権の保護貿易主義的動きは表面的には強く、韓国はその対象国となっているが、これに政治・軍事的課題も加われば、韓国が更に「米国離れ」を示せば、相対的弱者である韓国は、米国の動きによっても大きな被害を受けることは避けられないとも思われる。こうした中、次期大統領選挙の行方も気に掛かる。即ち、次期大統領が、「米国寄り」なのか「中国本土寄り」なのか、或いは「上手に米中の狭間で泳ぎきれる人物となるのか」を韓国ウォッチャーたちは気にしている。

 そして、朴大統領弾劾決定は近く、今年上半期には次期大統領選挙が行われると見られる中、現在の最有力候補は、文在寅候補と見られている。この文候補は、弁護士・市民活動家を前面に出した第19代国会議員で、ノ武鉉政権では青瓦台の民政首席や大統領秘書室長など大統領の側近として活躍した人物であり、THAAD(サード)配備が既成事実化しても中国本土と関係改善することが韓国外交の最優先事項と主張、象徴的な発言としては、共に民主党議員団の訪中を牽制した韓国大統領府を「情けない政府」と批判している人物であることから、「中国本土寄り」となるのではないかと見られているのである。(おわり)
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