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2017-02-13 00:20

(連載2)日米首脳会談の後に何がくる

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 安倍が成功だったと自賛する首脳会談だったが、双方とも本音をさらけ出した議論を避け、議論を深めることはしなかった。「入国規制」問題で噴出した欧州各国首脳らの批判、これに対してツイッターで自己主張を発信することしかできない窮地のトランプにとって、安倍は手元に引きつけられる唯一の男だ。下にも置かない「歓迎」の裏にそんなトランプ(というより米国)の胸の内が透けて見える。
 しかし、トランプは安倍訪米に合わせたように中国・習近平と連絡を取った。尖閣問題で安倍が日米安保を持ち出すことを承知の上で、習近平との距離感を縮めようとしたにすぎない。

 問題は今後である。日米関係にとどまらず、今年のイタリア・タオルミーナでのG7サミットがこれまでどおり西側7カ国の協調の場として機能するのだろうか、という懸念である。
 まず前者だが、安倍訪米直前に公表された日本の経常収支の大幅黒字をトランプ政権が見逃すはずはないだろう。安倍との会談でこの貿易不均衡を持ち出すことはなかったが、TPPからの永久離脱を宣言したトランプは、日本とは差しの経済協議を迫るとはっきり言っている。訪米に財務相の麻生と外相の岸田を同行させたのも、万が一、トランプが経済問題で難問を言い出した時と、今後の日米協議を見据えた態勢を米側に示すことだった。
 安倍が誠心誠意説得したところで、トランプがTPP合意に戻ることはありえない。現に安倍は自由貿易のメリットこそ口にしたが、トランプのTPP離脱に物申すことはなかった。日米協調を最優先とする安倍が、あえて正面から切り込むことをしなかっただけの話だ。逆に、米国との2国間協議に自ら乗り出す意向を明言したのだから、トランプはもとより米側は「したり」とにんまりしたはずだ。

 北米自由貿易協定(NAFTA)見直しも動き出す。世界の自由貿易の旗手としての米国は、今は存在しない。戦前のブロック経済が世界をどんな窮地に追い込んだか歴史を紐解くまでもないだろう。
 トランプ政権が念頭に置く新たな日米経済協議は、多分、1980年代の日米経済摩擦を再現させるのではないかと危惧される。
 今後予想される日米協議は、TPP協議に参加した12か国の合意がスタート台と、米側は主張するだろう。TPP合意が土台となれば、米側の対日要求はさらに強まるだろう。2国間協議で米側が高飛車に出ることは、過去の通商摩擦を振り返れば明確だ。中国に次ぐ日本の対米経常大幅黒字を米側は突き付けてくるはずだ。思い出すのは1980年代の日米貿易摩擦である。またあの時の炎が再燃するのだろうか。いやな予感がする。
 ワシントンからフロリダ・パームビーチに場所を移してのゴルフ外交、5回もの会食をニコニコ顔で自慢するのはよした方がいい。もっとも、トランプが理不尽な要求を突き付けてきたら、それを断固断る度胸があれば別だが。

 2番目のタオルミーナ・サミットだが、地球環境、人権、難民、貧困、経済・財政問題で同一歩調をとってきたG7首脳が、これまでのように真剣に和気あいあいと話し合うことができるだろうか。欧米間に限らず、文明の衝突を実感させるような状況に、先進各国はどう向き合うのか。喫緊のテロ対策でも各国の思惑の違いが鮮明となるだろう。難民受け入れに消極的な日本の立場を安倍はどう説明するのか。
 サミットからロシアが外れ、G7に代わって存在感を増したG20での影響力を増した中国の動向もG7首脳にとって大きな不安材料となるだろう。
 「取引外交」を恥ずかしげもなく高言する米国の不動産王から政界に転身したトランプを見ていると、1980年代後半から90年初頭にかけてわが国を席巻したバブル経済期の不動産業界を思い出す。大統領の登場は酉年の不安を象徴すると言っていいだろう。(おわり)
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