国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2017-02-01 14:49

(連載2)最近のフランス内政

緒方 林太郎  衆議院議員(民進党)
 ここで感じるのが「中道的政治が流行らない事への懸念」です。政治のど真ん中にポッカリ穴が空いているような印象になります。例えば、右派の予備選で負けたジュペ氏は少し年齢が高いですが、右派から中道までを幅広く取り込める候補だったと思います。昔はテクノクラート臭さが嫌われていましたが、今は年季を重ね、重鎮感が出てきています。社会党予備選で2位だったヴァルス氏は中道色をあまり醸し出していませんが、右派にも食い込める可能性のある人物ではあります。

 ただ、今回の左派、右派での予備選挙の結果、更にはル・ペン現象を見ていると、そんな「緩いメッセージ」を聞きたくないというフランス国民の現れなのではないかと思います。ここはBREXITしかり、トランプ現象しかりです。グローバリゼーションにより、世界中で経済的に、心理的に余裕が無くなり、バナナの叩き売りのように非現実的なポスト・トゥルースが広まってしまう。穏健中道的なメッセージは流行らなくなっています。人はそれが仮に嘘だと分かっていても、一時の爽快感と溜飲下げのため、その主張を選挙で支持してしまうというふうに見えてしまいます。

 両大戦間にドイツで起こった現象と似通った事が世界中で起きているのでは、と懸念してしまいます。社会全体の閉そく感、自由の重さに耐えかねて、「一発芸」のようなもので一時の満足を得ようとするという事です。エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」でも読み返してみようと思います。なお、少しだけ大統領選挙の全体像について述べておくと、極右国民戦線のル・ペン党首が大統領で躍進しそうな可能性については、何か真新しい事のように報じられることが多いですけども、2002年フランス大統領選挙では既にル・ペン(今のマリーヌ・ル・ペンの父)が第一回投票で2位に着けて、第二回投票に進んだことがある事は想起しておく必要があります。シラク大統領(19.88%)、ル・ペン国民戦線党首(16.86%)、ジョスパン首相(16.18%)で僅差でル・ペン氏が第二回投票に進みました。勿論、その後第二回投票でシラク大統領が圧倒的な票で再選されます。

 直近の全国的選挙である2015年12月の地方議会選挙で、国民戦線の全国得票率は27%を超えました。2つの地方では地方議会を取る寸前まで行きました。既に今回の大統領選挙で左派は候補が(いつも通り)分裂気味ですし、右派についても中道系候補が出てくれば票が割れるでしょう。下手をすると、第一回投票ではル・ペンがトップで来る可能性すらあり得ると見ています。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム