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2016-11-22 11:26

(連載2)トランプ氏の米国大統領選挙勝利について

真田 幸光  大学教員
 ここで、もう少し、具体的政策方針を意識してコメントします。トランプ氏は、既に、「減税」「インフラ投資拡大」などの成長政策を掲げており、短期的には米国経済の回復基調を支えると評価されています。しかし、こうした一方で、トランプ氏は国内の世論を意識、就中、労働組合を意識しつつ、一定程度は「保護貿易主義」を推進するものと見られ、これが、世界貿易を減退させ、結局は米国経済にとってもむしろこれが足かせとなる可能性もあるかもしれないとの見方もあります。また、2008年の世界金融危機・リーマンショックの震源地となった米国経済は、オバマ大統領が執権して以降、財政支出拡大と量的緩和という二大政策によって、最近では主要国の経済の中で唯一、緩やかではあるものの、回復の兆しを見せているとも言えます。実際に、失業率は10%台から今年9月には5.0%にまで下がり、昨年末からは利上げに舵を切ることも出来ています。

 しかし米国に続いて量的緩和に乗り出した欧州は依然として1%台の成長に留まり、日本は0%台の成長に留まっています。中国本土経済の成長率が10%台から6%台へと低下し、成長スピードが減速している中、世界経済の成長維持を考えると、中国本土経済に対して、トランプ政権が厳しい姿勢を採り、世界経済の成長の大きな原動力である中国本土を徹底的に痛めつけることはしてこないものと思われ、表面的な保護貿易主義姿勢は採っても、本格的に保護主義的な動きを取ることはせず、労働組合を納得させるために、アジア諸国の企業の米国内企業での雇用機会拡大など、むしろ実利が着実に取れるような政策推進に注力してくるのではないかと思われます。

 こうした中、上述したように、トランプ氏の大統領当選によって、世界の金融市場は瞬間的には「トランプショック」に陥りましたが、トランプ氏の経済政策がうまく稼働すれば、米国経済の単独での回復基調が続く可能性があり、この結果、特に雇用が改善されていけば、トランプ氏は米国ではむしろ高く評価されるようにもなっていくものと思います。

 このような予測の下、トランプ氏が保護貿易主義を強化し、ほかの国々も保護貿易主義に加勢する場合、世界貿易は更に減退する可能性が高くなるとも思われ、こうした結果、国際金融市場は、「トランプ氏がどの程度、保護主義的な動きを示すのか?」を注視しているようです。そして、米国がもしも保護貿易主義を強化すれば、中国本土との貿易摩擦の可能性が最大の危険要因として浮上し、対中貿易と対米貿易の依存度が高い韓国やベトナムなど輸出依存国は大きな打撃を受ける可能性もあると思われます。果たして、トランプ氏が実際に如何なる政策姿勢を示すのか、いずれにしても、当面は静観、じっくりと評価をしていく必要がありそうです。(おわり)
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