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2016-08-23 17:39

韓国と中国本土について

真田 幸光  大学教員
 東アジア情勢を分析する際には、ロシアの動きや中国本土の対応を意識しつつ、米国と朝鮮半島、米国と日本、米国と台湾がどのような関係を示すかが注目される点の一つとなります。特に、米国の威厳=Dignityが低下してきていると見られる昨今、日米関係は安泰と見られるものの、韓国も台湾も相対的には中国本土に擦り寄り始めつつあるのではないかとの見方も出、或いは、北朝鮮は中国本土を意識しつつ、米国へのアプローチを仕掛けていますが、米国は今のところこれに応じておらず、こうしたことから見ると、東アジアに於ける米国の相対的な地位が低下する一方、中国本土の相対的な地位は上昇しているのではないかと見られています。また、そうした状況を眺めつつ、ロシアは様々なポイントで、中国本土との連携を取る可能性を示唆しています。

 こうした中、これまで、相対的には米国に近い、或いは日米韓連携と言われてきた韓国は、経済面での関係強化などを背景に、更に中国本土への擦り寄りを強めてきていると思われます。軍事面では、渤海湾での制海権を中国本土に握られているとの見方から韓国海軍はより中国本土に寄っているとの見方もあります。そして、何よりも、経済面では、韓国企業の主たる市場が中国本土にシフトされつつある中、中国本土に対する依存度は増す一方であり、こうしたことから、韓国自身も中国本土に擦り寄ることに喜びを示している節も見られます。

 そして、こうした中、実際に韓国企業の対中投資は更に増す傾向を示しています。即ち、韓国貿易協会・北京支部によると、本年上半期(1~6月)の韓国企業の対中投資額(製造業中心、実行額ベース)は28億4,000万米ドルとなり、前年同期対比で17.8%増加しています。本年下半期(7~12月)もこの勢いが続けば、本年年間の韓国の対中投資額は50億米ドル台半ばに達し、2004年以来の高水準となる見通しとなってもてます。また、韓国企業の対中投資はここ5年、増加を続けてもいます。2004年に62億5,000万米ドルを記録した後、減少傾向が続き2011年は24億4,000万米ドルにまで落ち込みましたが、2012年には30億4,000万米ドルと増加に転じ、その後2013年は30億6,000万米ドル、2014年は39億7,000万米ドル、そして、2015年は40億4,000万米ドルとなっています。一方、同じ期間に日本企業の対中投資額は減少しています。2012年は73億5,000万米ドル、2013年は70億6,000万米ドルとなっていますが、2014年は43億3,000万米ドルと大幅に減少しています。更に、2015年は32億1,000万米ドルに留まり、韓国企業の対中投資額を下回る状況となっています。

 こうした状況を見つつ、韓国貿易協会は、日本企業の対中投資について、「現状維持」の方向に向かっているとの見方を示し、これに対して、韓国企業は如何に中国本土に食い込んでいるかを讃えつつ、今後も中国本土経済に食い込んでいくことを期待しているとの視点を示唆しています。果たして、韓国は今後、更に中国本土に擦り寄っていくのか、否か、注目したいと思います。
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