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2007-03-03 12:29

連載投稿(4)エネルギー安全保障の今後

池尾 愛子  早稲田大学教授
 第3に、李氏がリストアップした技術協力メニューには、「管理制度、ノウハウ、人材育成など所謂ソフト面の技術協力」が含まれている。これらについても日中技術協力の枠組みでの実施を考えうるのかもしれないが、むしろ修士課程レベルの経営教育を中国か日本でまず受講することが正当なように思われる。例えば、2004年6-7月に、広東省大手企業経営幹部の研修プログラム――2週間の早稲田大学産業経営研究所での理論研修と、3週間の企業数社での実務研修――が日本で実施された。その時派遣されたのは「国有・民営企業」の若手幹部が中心で、派遣の目的は、グローバル化した経済情勢に対応できる人材を育成すること、ひいては将来に企業グループのCEO(最高執行責任者)になるような人材を育成することであった。目的に応じて適切な機関にオーダーメイドの研修を依頼してよいのである。もっとも、1月の「日中対話」での提案の一つにあった「技術協力センター」においても、こうした研修を実施することができるかもしれない。

 第4に、李氏は国際エネルギー機関(IEA)のアジア版「アジア・エネルギー機関」の設立を提案したが、1月の「日中対話」で意見が出たように、むしろIEAそのものに中国が加盟ないし準加盟して、他のエネルギー資源輸入国と歩調をあわせて協力するほうが望ましいと思われる。最大の理由は、東アジアだけでは石油や天然ガスなどのエネルギー資源の超過需要状態になっていて、エネルギー安全保障を確保することができないからである。日本はかつてOECD(経済協力開発機構)に加盟することなく、傘下の開発援助委員会(DAC)に加盟していたので、傘下のIEAへの中国の加盟も考慮の余地があると思われる。もちろん、中国がDACに加盟して、開発援助においても多国間の協力枠組みに参加することは歓迎される。援助によって開発された資源を中国に輸出することで、アフリカ諸国が経済成長しているというのは、よいニュースである。

 2004年6月に北京で開催されたエネルギー安全保障フォーラムに参加して以降の個人的感想になるが、エネルギー・環境問題については、かなり率直な対話が実を結びうるかたちで日中間でも行なわれるようになってきたと思う。中国でも自然科学のいくつかの分野での研究においては、世界に伍す成果や技術が生まれていることがひしひしと感じられるのである。(3月2日付朝日新聞に李志東氏のオピニオンと戴彦徳氏へのインタビュー記事が掲載されており、2月9日のエネルギー・セミナーでの総括と発表の要点がほぼ盛り込まれている)。(おわり)
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