国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-08-09 00:04

(連載1)EU問題と英語の行方

池尾 愛子  早稲田大学教授
 欧州連合(EU)を授業で取り上げることがある。その際、EUが発信する最新情報をウェブで調べることにしている。私自身がコメントするにしても、当該国際機関自身がどのような情報を発信しているかは学生に伝えるべきだと思うからである。ブレキジット(Brexit、イギリスのEU離脱) の国民投票結果が出た直後からは、ヨーロッパ在住の友人(ヨーロッパ出身)とも久しぶりに連絡を取って、情報・意見交換をしている。友人は「6月23日夜、残留派優位を各種メディアで確認して就寝したが、24日朝起きると離脱票が多数を占めていたので絶句した(speechless)」という。

 EUの通貨問題になると、通常通りウェブ検索をしても必要な情報にたどり着けないことがある。友人も同様の不満をこぼしている。前回と同じキーワードを入れても、あるいは、文書タイトルをそのまま入力しても、以前にたどり着いたページになかなか行きつけないのである。それゆえ、授業で使えそうな情報にたどり着いた時には、必ずダウンロードしてURLを書き留めておくことにしている。

 ユーロ問題について、最近、EU解説「経済通貨同盟(Economic and Monetary Union、EMU)とユーロ」(欧州委員会-European Commission、EC、2012年、2014年改訂)を参照した。EU加盟国が国内通貨を共通通貨ユーロに転換する際に満たすべきマーストリヒト転換基準は、2011年にはユーロ導入国が守るべき「安定成長協定(Stability and Growth Pact)」として示され、2013年に発効したようだ。財政の条件、「年度の財政赤字が国内総生産(GDP)の3%以下で、政府債務残高が60%以下であること」は変わらない(本e-論壇への2015年7月1日の投稿「グレグジットについて考える」参照)。

 上記の「EU解説」では、ユーロ導入以降の経済金融危機の歴史も語られ、学ぶべき教訓が整理されている。「安定成長協定」に記されたルールが破られると、ユーロ圏経済は不安定になり経済成長が鈍化して景気が後退する。共通通貨を導入したため、加盟国間で経済不均衡があっても平価切下げ等で対処することが出来ないこと、競争力を強化する等しかないことが明記されている。ユーロ危機を経て「銀行同盟(banking union)」が形成され始め、2015年1月から欧州中央銀行がユーロ圏の諸銀行の監督責任を負うようになり、金融市場の監視も射程に入ると述べられている。規制と監督の強化・拡充を進めるとあるが、それには(弱い)銀行への指導、銀行制度や関連する法律の調整が含まれることであろう。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム