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2016-07-27 16:48

(連載1)南シナ海問題における中国本土の対応

真田 幸光  大学教員
 私は自らの主張のみ行い、他者、特に第三者の声に耳を傾けないような国には、「法治社会の中で秩序を守る資格はなく、現行の社会では大義はない」と考えています。こうした考え方の下、従来からの政治・外交力、軍事力に加え経済力を増していることを背景にして、更には他国とは「体制」が違うと主張して、例えば民主主義の概念が違うからと自らの都合が悪いときには国際社会の通常の概念に於ける民主主義を否定する一方、自らの都合の良いときには、国際社会の民主主義の概念を巧みに利用し、自らの立ち位置の向上に利用する「ご都合主義的、自国勝手主義的」な行為を繰り返す中国本土には、国際社会の中でリーダーシップを取る上での、「大義と資格」は全くないと考えています。

 その中国本土は、また、特に日本に対して執拗に不満をぶつけており、例えば王外相は、「戦争で被害を与えた加害者はその責を未来永劫負わなくてはならない」との主旨の発言を繰り返していますが、もしそうであれば、「中国と言う国がかつて、周辺諸国を加害者として侵略した責も未来永劫負わなくてはいけない」はずであり、それを「かつての中国と、今の中華人民共和国は異なる」とは言えないと言うことを全く理解していないことを見るにつけ、更に力を以って、それを背景にして何でも押さえつけられるようになってきていると中国本土が思い上がっている現状を見るにつけ、やはり「今の中国本土政府には、義もなく、品格も感じられない」と考えています。尚、中国本土人の中には義を大切にし、品格のある人たちがいることは念のため、ここに付記しておきます。

 さてこうした中、南シナ海問題に関して、フィリピンが中国本土を相手にして国際司法裁判所に訴え出たことに対して、長期間の審議を経た上で、裁判所としての見解が今般示されたことはご高承の通りであります。即ち、中国本土や周辺国が領有権を争う南シナ海問題で、国際司法判断を下すオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、中国本土が権利を主張する境界線「9段線」に国際法上の根拠はないとの判決を出し、南シナ海問題を巡る初の司法判断で、提訴したフィリピンの主張をほぼ全面的に認める判決が示されました。但し、国際法は、所謂「刑罰」などに相当する罰則がなく、法的拘束力がないのが現状です。

 そしてこうしたことも背景にして、自国に不利な国際司法判断を示された中国本土は当然に、これに対して、激しく反発しており、例えば、国務院新聞弁公室報道官は、すぐに「70か国以上の政府のほか世界の230以上の政党・政治組織が中国本土の立場に支持を表明した」と主張すると共に、「そもそもハーグの常設仲裁裁判所の選んだ裁判官そのものに中立性、公平性がなく、そうした裁判官を選んだ、日本人とその背後にいる日本政府が悪い」などと、ハーグの裁判所そのものの尊厳を侮辱する行為に出ていますが、見苦しいにもほどがあると思います。(つづく)

 
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