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2007-03-03 06:19

伊奈氏の「異議」に対するコメント

小笠原高雪  山梨学院大学教授
 3月2日付の伊奈久喜氏の投稿を拝見した。投稿は「映画『それでもボクはやっていない』を批判する投稿を本欄で2本読んだ」という一文で始まっている。「2本」のうち1本が2月17日付の佐島直子氏の投稿を指すことは間違いないとして、残る1本はどの投稿を指しているのであろうか。私の2月6日付の投稿を指しているのであろうか。もし、そうではないとしたら、本稿は無意味となるが、最近数週間の本欄において、上記の映画に言及した投稿者は佐島氏と私のほかには見当たらない。そこで、「2本」のひとつは私の投稿であるとひとまず仮定し、端的にコメントをしておきたい。

 結論から述べるならば、もし上記の仮定が誤りでないとしたら、伊奈氏の投稿は私の投稿に対する誤読に基づいている、といわざるをえない。なぜならば、私は投稿のなかで、映画「それでもボクはやってない」を「批判」などしていないからである。「門外漢の筆者は、この映画がわが国の刑事裁判の姿をどの程度にまで正確に反映しているのかを判断できない」(第二段落)という留保こそ設けたものの、全体の基調は周防監督のメッセージを重要な問題提起として受け止めている。このことは、私の投稿の全文を丁寧に読んでくださるならば、明らかになるのではないかと思う。

 たしかに、私は投稿のなかで、映画がわが国の国際的イメージに及ぼすかもしれない影響について、いささか気になっている、と述べている(第三段落)。しかし、それは、映画に描かれている裁判の姿は事実に反したものである、といった断定に基づくものでは決してない。それどころか、私は「国内の状況にもつねに自省の眼を向け、もし至らない点が発見された場合は改善してゆく努力がなされなくてはならないはずである」(同上)と述べている。これは伊奈氏の議論にきわめて近いものではなかろうか。

 伊奈氏の議論と私の議論の類似点はそれだけにとどまらない。すなわち、伊奈氏が「日米地位協定に関連して米側が神経をとがらせる」ことに関して述べたくだりは、私の投稿の第四段落の論旨と大同小異のように思われる。この段落のなかで、私は「わが国としては明確な主張を行なうとともに、冷静な自省も忘れるべきではない」と書いている。その後段部分は、「これを契機に日本の警察の捜査や刑事裁判の近代化が進む材料になれば、と思う」という伊奈氏の議論と、ほぼ同様の趣旨で書いたものである。

 全体として、私の投稿は伊奈氏の投稿ほどにクリアカットでなく、含みのある表現を随所でしている。これは私が裁判制度の門外漢であり、現場の取材経験を全く持たないが故の配慮であったが、私のそのような書き方が誤読の誘因となった可能性はあるであろう。また、2月17日付の佐島氏の投稿が、「小笠原氏の考えたことに、私も同感である」という書き出しで始まっていることも、誤読の可能性を大きくしたかもしれない。佐島氏へのコメントは本稿の趣旨ではないが、少なくとも、「小笠原投稿にあるような日本の刑事裁判制度に対する国際的な偏見」という佐島投稿の一節が誤解を招きやすいものであったことは、この際指摘しておきたい。

 冒頭に断ったように、本稿は伊奈氏のいわれる「2本」のひとつが私の投稿である、という仮定に基づいている。もし、そうではないとしたら、本稿は無意味となるし、私は伊奈氏を誤読したことについて伊奈氏にお詫びしなければならないことになろう。しかし、伊奈氏は深い洞察と鋭い主張で知られる著名なジャーナリストであり、大きな影響力をお持ちの方であるところから、ありうべき誤読の可能性を払拭するべく、念のため再論した次第である。失礼の点があれば御海容を願いたい。
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