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2016-06-06 14:42

「法の支配3原則」は国連憲章のエッセンス

倉西 雅子  政治学者
 先日、伊勢市で開催された伊勢志摩サミットでは、中国の海洋進出を念頭に、参加7カ国とEU首脳との間で「法の支配3原則」が確認されました。早々、中国の王毅外相は、時代の潮流はG20にあると主張し、G7での合意に反発を示しています。

 中国側は、伊勢志摩サミットのメンバーの間では「法の支配3原則」が合意されても、新興国も参加するG20では、こうした原則は通用しないと言いたげなようです。G20には、法の支配の原則に否定的な態度を示してきたロシアや韓国等の諸国が加わるからです。しかしながら、この中国側の見通しは甘いのではないでしょうか。何故ならば、「法の支配3原則」こそ、国連憲章の根幹にかかわるエッセンスだからです。

 「法の支配3原則」とは、(1)国際法に基づく主張(2)力や威圧を用いない(3)司法手続きを含む平和的解決の三者から構成されます。これらの要素は、既に国連憲章の随所に織り込まれており、例えば、第1条には、「…平和を破壊する虞のある国際的紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。」とあります。司法解決を促進するために、国際司法裁判所も、当憲章に基づいて設立されています。仮に、G20において「法の支配の3原則」が否定されるとすれば、それは、即、国連憲章の否定をも意味するのです。法の支配とは、今日の国際秩序の根幹ともなる原則なのです。全ての国連加盟国には、当然に憲章順守義務がありますので、G20の参加メンバー諸国が、易々と中国の主張に靡くとも思えません。しかも、中国が暗に提唱する“法的根拠なき主張”、“力の威圧の行使”、“反平和的解決”に同調することは、国際法による保護から自ら抜け出した結果、自国が中国の餌食となる結末を招きかねないのですから。

 次回のG20は、9月に中国の杭州市で開催される予定ですので、ホスト国の立場を最大限に利用して、中国は、南シナ海問題について、伊勢志摩サミットで確認された「法の支配3原則」を覆す方向で画策することでしょう。しかしながら、この時期には、既に仲裁裁判所での判断も示されていますので、G20を舞台に中国が法の支配の否定に躍起になればなるほど、中国は、国際社会から孤立することになるのではないでしょうか。
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