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2016-05-12 15:16

(連載1)トランプ氏の世界の安全保障政策

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 アメリカ大統領選で、共和党の候補者となることがほぼ決まったドナルド・トランプ氏の発言はこれまでの「常識」を覆すものが含まれており、多くの人に驚きと不安を与えています。私が気になるのは「海外駐留米軍」の駐屯国に対し防衛費の追加分担を求め、それができないのなら撤退も辞さないという主張です。

 トランプ氏がどのような世界秩序を考えているのかは不明です。おそらく何もなく、思いつきを喋っているという見方もあります。基本路線は「アメリカのことだけを考えて、他の国のことはどうでもいい」ということなのでしょうが、「海外駐留米軍」を撤退するのがアメリカのためになるのかどうか、同盟国が勝手に軍事強化するのがアメリカのためになるのかどうか、アメリカが同盟国への「支配権」を弱めることがアメリカのためになるのかどうか。こうしたことをあまり考えることなく、どんどんと発言をしていきます。問題は、本当にトランプ氏が大統領になったら、しゃべったことを実践するかもしれないということです。確かに議会の承認なども必要ですから大統領が勝手に外交をするわけではありませんが、かなりのことはできます。もし本当にトランプ政策が実施されたら世界は相当に混乱します。特に東アジア。中国、韓国、日本、北朝鮮、ロシアなどはトランプ氏の方向でかなり影響を受けます。

 トランプ氏の主張の一つは、自分のことは自分で守れ、です。アメリカは日本や韓国は同盟国の中に入れながら、アメリカの軍事・外交戦略の一端を担わせるというものでした。過度に軍事化させることなく、コントロールするというものです。トランプ氏は、北朝鮮から韓国を守るのであれば金を出せ、そうでなければ撤退するから自分で守れと韓国に主張します。日本にも同様です。中国や北朝鮮などから日本を守る気はない、守ってほしいなら金をだせ、嫌なら自分で守れ、というスタンスです。日本も韓国も核兵器保有をしてもいいとまで言っています。すでに中国、北朝鮮は核兵器を保有していますから、アメリカがこうしたスタンスに変わるなら、韓国は核兵器を保有する選択肢を真剣に考えるでしょう。そうなると日本さえわからない。単独防衛となると軍事予算もさらに必要になるでしょう。中国、韓国、北朝鮮、日本、台湾、ロシアが軍拡競争をする可能性がでてきます。極めて危ない状況になる可能性があります。自民党もこのようなオプションは考えていなかったでしょうが、現実となると、単独軍事化路線を主張するタカ派が活気づく可能性はあります。

 東アジアだけでなく、東南アジア、南アジアもアメリカの撤退の影響を受けます。アメリカが良くも悪くも世界の警察、アジアの警察の役割を担ってきました。軍事大国となった中国が自由に覇権を拡大することができなかったのですが、アメリカが頼りにならないとなったら、アメリカ以外の国で軍事同盟ネットワークを作る必要が出ます。現在の日本の集団的安全保障の議論は基本的にアメリカとの関係が中心ですが、アメリカ抜きの集団的安全保障の議論が出てくるでしょう。アジア全体が中国ブロックと反中国ブロックに分断され、不安定化する可能性があります。(つづく)
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