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2015-12-16 09:12

(連載2)「知財戦略」に問われる国家の器量

芹沢 健  会社員
 「知的財産」というと、莫大な特許料収入や著作権料などがまず連想され、一攫千金的なイメージが先行しがちであるが、実際には、法律、技術、経営、そして時には倫理なども複雑に絡み合ってくる実にデリケートな領域の問題である。

 たとえば、当該技術に関連する法律や判例、類似技術のチェック、特許化・営業秘密とする秘匿化・無償で開示するオープン戦略などの各選択がもたらすメリットとリスクの比較考量、特許戦略をめぐる経営者と研究者の間の合意形成などは、決して表舞台からは見えない縁の下の作業である。このような作業なしには、いかに優れた研究であっても、日の目をみることはないし、ましてや自社や社会に貢献することもない、という実にシビアな世界なのである。そのうえで、いかなる知財戦略が望ましいかが、問われるべきなのである。

 いずれにせよ知財戦略は諸刃の剣である。これは知財に直接かかわる人間の、先見性、価値観などといった「ヒューマン・ファクター」に左右される以上、当然のことである。こうしてみると、「知財戦略」、一介の国民からすれば、特許戦略や産学連携など聞き慣れないワードが並ぶ縁遠い分野とも思われがちだが、その核となるのは、「人に生かす」という単純であるが篤い思いではないか。「イベルメクチン」は、前述のとおり最良の形で人類に貢献することができたが、他方、エイズ治療薬は、高額なライセンス料ゆえに、途上国での普及の遅れや、特許権侵害の問題が起こっているなど、まさに人間の生殺与奪が知財戦略に左右されているといっても過言ではない状況にある。

 現在、日本政府は、TPPを見据えて、特に中小企業の特許活用の支援に力を入れているが、それはそれで結構ではあるが、他方で、微に入り細に入る支援のみならず、「人に生かす壮大な知財戦略」をも描いてもらいたい。理想主義に過ぎるかもしれないが、目先の利益だけに目がくらんでいては先進国の名が泣く。国家の器量が問われてくる所以である。それがひいては、知財戦略のみならず、貧困、感染症、飢餓等、恒常的にして複合化した脅威からの安全の確保というグローバル・イシューの解決へとも繋がっていくであろう。(おわり)
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