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2015-09-16 06:05

安保法案、今夜にも採決で緊迫の攻防

杉浦 正章  政治評論家
 安全保障関連法案をめぐる与野党の攻防は、9月16日夜から緊迫の段階に突入する。与党は同夜中に委員会採決に持ち込む方針であり、野党とのぎりぎりのせめぎ合いが展開される。こうした中で与党は、関連法案施行後の国会の関与を強める方向で「元気」など野党3党と一致した。3党は賛成票を投じることになり、野党は事実上分断された。これにより参院242議席のうち、148議席以上が賛成に回る方向が確定、議会制民主主義による圧倒的な「民意」の反映が一段と明確となった。一方、左傾化を強める維新と与党との修正工作は決裂したが、これにより維新左派は存在意義が薄れ、民主党に吸収されるしか道はなくなった。地方公聴会の設定で特別委審議を遅延し、「何をするか分からない」と危ぶまれていた委員長・鴻池祥肇も、自民党内の怨嗟の声がやっと分かったのか、採決へと動いた。委員長職権で16日夜の締めくくり質疑を開催することを決めた。午後6時から委員会は開催され、最終質疑の後、深夜にも採決に突入するものとみられる。機は熟しており、この機を逃さないだろうと思う。遅くとも17日未明か、午前中の委員会では採決することになる。したがって安全保障関連法案は、17日午後の参院本会議に上程されて、野党の議事妨害があっても、18日までには成立する流れとなってきている。

 これに対して民主、共産両党などは、衆院に内閣不信任案、参院に問責決議案などを次々に上程し、議事妨害をはかる方針である。不信任案や問責決議は1つの処理に3時間はかかり、長ければ20時間を越える審議の遅延になりかねない。これに牛歩やフィリバスターなどが加われば、週内成立がずれ込みかねない危険性もある。与党は投票時間や質問時間短縮策を議決して対抗する可能性もあるが、全ての動議に優先する内閣信任決議を可決、一事不再議で一気にけりを付けることも視野に入れだした。いずれにしても野党のうち3党が賛成に回ったのは大きい。自公独走の印象を打ち消す効果がある。野党分断に成功した政府・与党の作戦は見事であった。少ないと言っても元気、次世代、新党改革を合わせれば14議席となり、維新の11議席より多い。維新も分裂傾向を見せており、11人全てが反対にまとまる保障はない。

 特別委は15日の中央公聴会で6人の公述人から賛否の意見を聞いたが、野党の推薦した公述人の度し難い現状認識には呆れ返った。いくら安全保障に無知である学者や元裁判官とはいえ、平衡感覚さえあれば、少なくとも日本を取り巻く安全保障環境の変化ぐらいは読み取れそうなものだと思うが、ノーテンキな一国平和主義にこり固まっている。昔は伝統的に保守の論客がそろっていた慶応も、変わった名誉教授が出現したものだ。小林節は安全保障関連法案を「法律ができると、不戦から戦争可能状態に入る。『戦争法案』以外の何物でもない」と、こともあろうに戦争抑止のための「不戦法案」を「戦争法案」と断定した。民主、共産の主張そのものを踏襲しており、こんな教授に扇動される学生はたまらない。もう孫は慶應には入れない。小林は「専守防衛で十分この国は守られている」と宣うたが、象牙の塔に長くいると、今そこにある危機が分からなくなるのは、昔から学者の悪い癖だ。吉田茂が「曲学阿世」と断定したのも無理はない。

 元最高裁判事も質が落ちた。浜田邦夫は何と「最高裁で絶対に違憲判決が出ないという楽観論は根拠がない」と発言した。言論は自由だが、元最高裁判事たるものが、どこかの床屋のおっさんや競馬の予想屋のように、こともあろうに最高裁の判決を予測してはいけない。自衛権の容認を打ち出した唯一の最高裁判決である「砂川判決」の勉強を一からやり直し、最高裁判事の先輩の深い国家への思いを理解した方がよい。安全保障問題はまさに、「世界の非常識」の政党、学者、裁判官がレッテル貼りを繰り返し、衆愚を扇動している状況だ。しかし安倍が「将来は理解される」と述べているとおり、日本国民は浅はかではない。おそらく半年で大半が誤解から抜けだし、長くて2、3年で誤解はゼロになる。安保条約が戦後70年の平和を達成したように、安保法制は今後半世紀は日本を侵略しようとする国が出てこない状況を作り出す礎なのだ。
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