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2015-09-09 12:52

選民思想としての護憲派

山口 利朗  会社員
 「選民思想」という言葉があります。ある特定の集団や民族が、自分たちのことを、ある超越的な存在によって選ばれた特別な存在であると信じ、行動する立場を意味します。この立場に身を置くと、「自分たち」以外の存在は「選ばれなかった存在」となるわけですから、憐みや蔑みの対象にしかならず、対等な対話の相手とはなりえません。同時に、そのような相手からの批判や問題提起はまったく耳に入らないということになります。ときには迫害(あくまで自意識ですが)さえも一種の名誉となりえます。

 「宗教的に寛容な日本は、そんな『選民思想』などとは無縁だ」と考えるのはいささか早計かもしれません。たとえば、いわゆる「護憲派」の存在はどうでしょうか。この人たちが「超越的な存在」として「信仰」する対象は、いうまでもなく日本国憲法です。「世界に誇るべき平和憲法」などといった、実は根拠のない「教え」でも、一たび「信仰」してしまえば日本国憲法は一種の経典と化します。彼らにとって何より大事なのは、世の中の動きが日本国憲法の「教え」に沿うか沿わないか、つまり「合憲か違憲か」という一点に尽きます。

 彼らの黄金郷は「憲法内世界」にあるようですから、たとえ外世界との間に摩擦が生じたとしても、「間違っているのは外世界」となるわけです。外世界の変化に応じて日本国憲法の条文をいじるなど、彼らにとっては聖書やコーランの文言をいじるに等しい冒涜ですから「ありえない話」です。いささか揶揄が過ぎたでしょうか。しかし、昨今の安保法制論議をみていても、大多数の憲法学者や「護憲派」は、その言動や発想からして、どうもこのような「選民思想」に染まっているとしか思えないのです。彼らの致命的な欠点は、たとえ国内的に日本国憲法を「経典」として崇めたとしても、対外的にはある国の一基本法にすぎず、「超越的存在」などと見てもらえるはずもないことが彼らには理解できないことです。

 今回の安保法制論議が、国会内外で、「安全保障」論議にはならず、ひたすら合憲か違憲かをやりあう「憲法」論議に終始したことは、「護憲派」が一定の影響力を持つ我が国の安全保障感覚の不健全さを示して余りあるといえます。この現状を克服するのはどうしたらいいのでしょうか。対話を拒む「護憲派」には説得は通用しません。ですから、まだその「選民思想」にカブレていない国民を一人でも増やすべく、安全保障の王道の議論を普及させ、理解してもらい、そして民主主義の論理(数の論理)で「選民思想」を脇に追いやるしかないのかもしれません。みなさんはいかがお考えでしょうか。
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