国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-07-07 23:52

ギリシャとユーロ教育

池尾 愛子  早稲田大学教授
 現下のギリシャ問題を解決するには時間がかかることは誰にも分かっている。時間をかけて解決の方策を見いだしてよいのなら、選択肢は増えるはずだ。

 ユーロ圏では、マーストリヒト・クライテリオン(基準)は常識のはずだ。ひょっとして、この単一通貨ユーロへの転換基準(条件)を教えていない国があるというのだろうか。もしそうならば、義務教育のレベルから、ユーロの素晴らしさとそれを維持するための条件(転換基準)を懇切丁寧に教えるべきである。その基準・条件を満たす意思のない国は、圏外に退くべきであろう。

 マーストリヒト・クライテリオンは、共通通貨を導入し維持するための最低必要条件である。実際、欧州委員会(European Commission、EC)の『拡大EUにおけるユーロ』(EC2007)によれば、マーストリヒト基準は、ユーロへの転換の「実質基準」を反映する「名目基準」にすぎない。「実質基準」は、競争力、労働力スキル、金融部門統合、産業構造、その他の社会経済的要素の転換をさす(本e‐論壇への2012年8月14日の投稿「ユーロ問題に解決策はあるか」、EC2007 http://ec.europa.eu/economy_finance/publications/publication6730_en.pdf 参照)。

 経済学的にいえば、マーストリヒト・クライテリオンは、インフレ率と長期利子率を低めに安定させようとする基準にすぎない。財政赤字制限に関する基準は、長期金利を低めに安定させることを狙っているのである。これらが達成されれば、共通通貨を維持するための必要条件が満たされるはずだと判断されたのだろう。つまり、これらの必要最低限の基準が厳格に守られれば共通通貨は維持できるはずだというのが、10年以上にわたる単一通貨導入までの議論の結論の一つだったのではないか。そうだとすれば、マーストリヒト・クライテリオンはそれらが必要な理由とともにユーロ圏の全国民に教育されなければならないはずであろう。これは民主主義の問題ではなく、教育の問題なのではないか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム