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2015-06-30 18:27

期待薄の日中“海上連絡メカニズム”―“戦争防止メカニズム”ではない

倉西 雅子  政治学者
 2013年2月、東シナ海で起きた中国海軍艦艇が日本国の海上自衛隊の護衛艦に対して射撃管制レーダーを照射した事件は、日本国のみならず、国際社会にも衝撃をもたらしました。ロックオンの状態であったというのですから…。

 ロックオンとは攻撃の前段階である標的の捕捉を意味しており、発射ボタンが押されれば、最悪の場合、海上自衛隊の護衛艦は海に沈むところでした。中国による先制攻撃ともなりかねず、偶発的な事件が武力衝突にまで発展しかねなかったのです。

 そこで、日中間では、こうした事件の再発を防ぐための“海上連絡メカニズム”の構築で合意し、実際に、領海・領空は除外するものの、その運営が開始される見通しなそうです。しかしながらこの仕組み、それほど期待はできないのではないかと思うのです。確かに、日常的な巡視活動における偶発的な衝突を避けることはできるかもしれませんが、中国が、海洋戦略の一環として尖閣諸島や沖縄に対して軍事侵攻を実行する場合、中国が、日本側に自国の艦隊の行動計画に対する重要な情報を伝達するはずもありません。否、日中間の海上連絡メカニズムを利用した事前の攪乱作戦さえ懸念されるのです(偽情報等の伝達…)。しかも、領海・領空は除かれるというのですから、尖閣諸島や沖縄に対しては無力となります。

 集団的自衛権否定論者や親中派の人々は、両国間における海上連絡メカニズムの運営開始を以って、中国脅威論の火消としたいのでしょうが、この仕組みに“戦争防止メカニズム”を求めるには無理があります。防止できるのは、現場における偶発的な武力衝突のみなのですから、中国の拡張政策に起因する安全保障上の危機には備えを怠ってはならないと思うのです。
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