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2015-06-19 06:40

辞めない橋下徹が、安保法制修正のカギ

杉浦 正章  政治評論家
 大阪都構想の敗北で「市長任期満了で政界を引退する」と言明した大阪市長・橋下徹について、筆者は「政治家を辞めるのやめたになる可能性も否定出来ない」と予言したが、その通りになりつつある。首相・安倍晋三との会談後、政界完全復帰の様相だ。一方で、大誤算したのは代表・松野頼久であろう。重しが取れて野に放たれたかのように、独断専行、野党再編を目指して民主党に大接近、「年末には100人の新党」と豪語していた。ところが6月14日に首相・安倍晋三が橋下との会談で撃ち込んだ大くさびが利きすぎるほど利いて、安保法制修正の流れが生じ、民主党との関係を分断された。橋下が「辞めるのやめた」の第一段は、ツイッターによる民主離れ宣言である。「民主党とは一線を画すべきだ」など、まるで機銃掃射のように、民主接近阻止に出たのだ。松野ははしごを外され、「私としては非常に悩んでいる」と漏らすに至った。民主党は孤立化し始めて、ひたすら維新の分裂を祈るしかなくなった。

 松野は意気消沈して未熟さを露呈、いまのところ、なすすべを知らない状況であろう。次ぎに橋下が狙うのは、おそらく政府・与党との安保法制修正であろう。修正して安保法制を成立させれば、野党として存在価値を示せるし、歴史的に評価されうる立場となる。このポジションはおそらく将来的に目指すであろう中央政界への進出に極めて大きな地歩を築くことになるからだ。そのとっかかりとなるのが20日に大阪で行われる維新内部の修正をめぐる調整だ。今のところ橋下は、維新が固めた修正案について「維新の案では国民の理解は全く得られない」「こんな修正案は集団的自衛権の行使でも何でもない。政府案に少し難癖を付けた程度」と、極めて大まかな批判をしている。あえて各論に入ることを避けているが、これは法案を知らないのではなく、ゼロベースから修正案を作り直そうとしているのだろう。しかし、維新現行案でも一部は合意可能な案も入っている。例えば維新の修正の核となるホルムズ海峡での機雷除去について、「経済危機だけで自衛隊を送ることが出来ないようにする」については、これは安倍が「国民生活に死活的な影響が生じるか否かを総合的に判断する」として「単なる経済的な影響では派遣しない」と述べたこととも符合しうる。

 おそらく橋下は、官房長官・菅義偉らとの水面下での接触を通じて、修正可能な部分を生かしつつ、独自の修正案を打ち出すつもりなのであろう。菅は「考え方が示されれば真摯に対応する」と発言。公明党代表・山口那津男も「真摯な提案なら対応したい」と前向きだ。しかし政府側との調整は簡単ではないうえに、党内の松野ら民主党系や結いの党系議員らの巻き返しも予想され、まとまるかどうかは五分五分だろう。ただ安倍にとってはまとまろうがまとまるまいが、維新が修正案を出すこと自体が政治的に極めて重要なのである。安倍は6月18日の衆院予算委で「維新が独自の法案を検討することに敬意を表したい。我々の法案と並んで審議されるとすれば、国民の皆さんに選択肢を見て頂きながら、審議が深まってゆく」と述べている。

 これは、修正または法案に維新の主張を添付する形で妥協できればよし、妥協できなくて維新が独自に法案を提出しても、集団的自衛権の行使容認に賛同する政党が加わった事を意味する。つまり、反対は憲法学者の論理を請け売りにする民主党ほか少数政党だけとなるからだ。加えて維新案が出されるということは、一挙にまとまれば成立は早まり、延長幅にも影響する。まとまらなくても採決に際して、まず維新案を否決して政府案を採決する方式など、正常な形で行うことが可能で、強行採決の印象を回避できる。その前に維新が修正案をめぐって分裂するようなケースでは、橋下傘下の政党と結託することも可能である。油断は出来ないが、どっちに転んでも、安倍にとっては有利になりそうな局面である。
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