国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-06-02 10:32

(連載2)知財TPP交渉の落とし穴

芹沢  健  会社員
 次に著作権について。ここでも特許と同様「先進国VS途上国」という構図がみられる。すなわち、日米のようなコンテンツ大国は著作権の強化を主張するが、他方、アジアの途上国は海賊版DVDの氾濫からもわかるように著作権保護の意識はおおむね低い。この分野におけるTPP交渉で、米国は「著作権保護期間の大幅延長」や「非親告罪化」を主張しており、日本もこの要求に譲歩する方向のようだ。

 この流れは、一見すると理に適ったようにも見えるが、次のような問題点もある。まず、著作権侵害の「非親告罪化」によって、日本のアニメ、漫画等の二次創作やパロディ化などが事実上否定されるという点である。現下の日本の著作権法では、著作権侵害はそのほとんどが親告罪である。条文上、厳密には違法であっても、権利者(被害者)が告訴しない限り処罰はされない。これがTPP交渉によって米国の要求通り、著作権侵害が非親告罪となると、権利者が告訴しない程度の利用行為ですらすべて処罰の対象とされる。その結果、日本がこれまで国際社会を魅了し支持を得てきたいわゆる「オタク文化」もシュリンクしてしまう、というリスクが発生する。これは日本のソフトパワー戦略上、真剣に顧慮されるべき問題ではないだろうか。

 いずれにせよ、特許や著作権を含め、知財の存在意義は「創造→保護→活用→創造…」という知的創造サイクルを活性化することこそが、その最大の目的である。医薬品であれば、新薬開発のためのリサーチ・アンド・ディベロプメント(創造)→特許取得(保護)→特許料収入の獲得(活用)→特許料により得た利益で新たな開発(創造)へ、というサイクルの推進である。しかし、このプロセスにおいて、「保護」のみを重視していては、「活用」という次の段階へと進むことができず、ひいては、新たな創造もままならなくなってしまう。

 TPPは、国内のさまざまな分野における改革を余儀なくさせることは間違いないが、それはリスクを超えるチャンスにつながるが戦略的意義があるからである。しかしながら、この知財の分野に関しては、現状のTPP交渉の方向性には多分に疑問が残ると言わざるを得ない。日本の知財戦略は、知的創造サイクルの推進という中長期的な観点、より大きな目標に沿ったかたちで展開されるべきではないだろうか。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム