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2015-01-04 00:30

(連載2)安倍政権は沖縄に〝度量〟を示せ

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 菅官房長官の冷ややかな態度を見ていると、1年前の安倍首相と当時の仲井真弘多知事の「肝胆相照らす」和やかな会談がいやでも思い出される。仲井真氏は首相から驚くような経済振興予算を約束されて「これでいいお正月が迎えられ」と言い残して帰任、辺野古沿岸域の埋め立てを容認した。菅氏の冷ややかな言葉は、政権が1年前、仲井真氏から辺野古沿岸域の埋め立て承認を取り付けた努力が無駄になったとの苦い思いからのものだろう。菅氏は昨年春以降、公式、非公式に何度となく仲井真氏と接触、辺野古移設の条件整備に奔走している。その結果としての埋め立て容認だった。それがひっくり返ってしまったのである。

 菅氏は9月の内閣改造で沖縄米軍基地の「負担軽減担当」になり、辺野古移設の指揮棒を振るった。外務、防衛両省に任せていてはらちが明かないと政権が判断したからだ。官邸主導の政治が、ここにも表れた。菅氏は移設反対の声が高まっても「過去の問題」として取り合わず、「粛々と(移設計画を)進める」と言い続けてきた。知事選、衆院選を終えた現在でも「他の事業と同じように進めるのが基本方針」と移設方針に変わりがないと強調している。翁長知事は前知事の埋め立て許可の過程に問題がなかったかどうか調べるという。仮に手続きに「違法性」があった場合、認可を取り消す可能性にも言及している。政権が既定方針どおり埋め立て準備作業を進めるようだと、県側との間で抜き差しならぬ事態も予想される。当然、日米同盟関係に響くことも避けられないだろう。

 1995年9月に起きた米海兵隊員による少女暴行事件は、基地に対する県民の怒りのマグマを爆発させ島ぐるみの抗議行動となって普天間飛行場返還の日米合意を引き出した。知事選、衆院選で明確となった辺野古移設反対の民意は、20年前の県民の〝怒り〟を思い起こさせる。橋本政権と大田県政が対立した当時は、沖縄問題に通じた閣僚や有力議員、経済界首脳らが水面下で調整に動いた。調整は実らなかったが、その努力はあった。だが、現政権下ではそんな動きはほとんどない。また当時と違うのは、経済振興というアメが通用しなくなっていることである。

 辺野古移設作業はまだ準備段階だし、埋め立て工法の変更申請の処理も先行き不透明だ。本格作業に着手するまでに乗り越える問題は多々ある。翁長知事は2月にも再度上京、政権首脳らに辺野古移設についての民意を直に説明したいと考えている。問題は、前知事の埋め立て承認ですべて解決したわけではない。もちろん「過去の問題」ではない。安倍首相が常々言っていたように「沖縄に寄り添う」「丁寧に説明して理解を求める」ことを行動で示してもらいたい。(おわり)
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