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2014-11-27 06:57

第3極はまるで「馬糞の川流れ」でばらばら

杉浦 正章  政治評論家
 第2次大戦末期ニューギニア戦線などで米軍の猛攻を前に、部隊長らが「各自自活して生き延びよ」と事実上の日本軍解体を涙ながらに宣言しているが、いまそれが衆院選前の第3極で起きている。生活の党代表・小沢一郎がついに所属議員らに「好きにしていい」と事実上の解体を認めた。みんなの党代表の浅尾慶一郎も「手法の違いによる解党ということだと思う」と、変な理屈を付けて解党を宣言した。維新代表・橋下徹も出馬を断念した。物語るものは何か。第3極とはしょせんはマスコミに踊らされた風に漂う浮き草に過ぎなかったということだ。今のところ野党には「第3極の軒並み失速」という事態が起きて、遠心力のみが働き、求心力が働かない。このバラバラの事態を政界用語では「馬糞の川流れ」という。「せめて牛糞で固まりたい」と思っても、「この指止まれ」と手を挙げるカリスマと求心力のある指導者がいない。一昔前なら小沢がそれであったが、今は落ち目の三度笠だ。しかし小沢の動物勘というか、予知能力はすごい。既に9月の段階で「再増税の判断をする前に騒ぎがおきる」と臨時国会終盤の「消費税政局」を予測しているのだ。おそらく小沢は各種経済指標を見て7-9月のGDPが壊滅的になると予測、臨時国会の最中に政局に持ち込む“最後の決戦”の作戦を編みだした。

 しかし、解散までは予想していなかったと見えて「野党側が候補者を決めて走らせるには、半年は必要だ。そんなに時間はない。来年の4月の統一地方選挙の後ではもう遅い」と、早期に野党が民主、維新を中心に収れんして、小沢の生活の党も民主党と合併して、野党2党が候補者を一本化する作戦を明らかにしていた。その場合に候補者を調整出来るのは自分しかないと思っていたようで、「お役に立てれば、調整する。要するに実務だ」と意欲的であった。実際に、小沢は安倍が消費増税延期を決断したことを理由に、「消費税が延期になれば、わだかまりはないはず」と親しい関係にある参院民主党のドン輿石東を通じて、民主党に打診をした。民主党を中心に第3極を糾合して新党を結成、自民党に対抗しようとしたのだ。しかし、同党幹部は「とんでもない」と拒絶。“小沢アレルギー”は全く消えていなかったのだ。これが冒頭の「好きにしていい」との投げ出し発言につながるのだ。本人は気付かないだけで、もう小沢の活躍出来る時代ではなくなっていたのだ。

 一方で、もう1人第3極復活の鍵を握っていたのが維新代表の橋下徹だ。橋下が衆院選に立候補すれば、維新に「微風」くらいは吹いたかも知れない。当初橋下は「公明党にやられたので、このままでは人生を終わらせることはできない」と事実上出馬を宣言していた。公明党の佐藤茂樹が出馬する大阪3区で出馬する構えであった。大阪都構想を巡って決裂した公明党への私怨が募ったのだが、結局勝てるかどうかの自信が持てなかったのだろう。11月24日朝の街頭演説で不出馬を表明した。橋下が出馬すれば少なくとも維新は固まった。しかし共同代表・江田憲司では「風」は吹かない。逆に風で当選した維新の1年生議員らに動揺が走り、既に10数人が民主党からの出馬を打診しているといわれる。これに対して江田は、22日の講演で、選挙後に民主党の一部勢力と合流を目指して協議を始める考えを示した。「信頼関係をつないできた民主党の閣僚経験者と投票日の夜から話をし、自民党に対抗し得る新しい一大勢力をつくりたい」と述べたのだ。閣僚経験者とはかねてから橋下らとの親交がある前原誠司や細野豪志を念頭に置いている。しかし普通は選挙前に新党結成を打ち出すのだが、あえて選挙後としたのはなにやらいぶかしい。選挙後では勢いも出ない。結局、離党を食い止めるのに懸命の発言なのだろう。

 他方で、みんなの党の浅尾も、さじを投げた。もともと渡辺喜美という強烈な個性で持ってきた党であり、渡辺がつぶれては、ひ弱なインテリの浅尾では政治家集団を維持するのは無理だったのであろう。渡辺の個人商店を番頭が経営しても限界があるのだ。こうして第3極は次々に「自活して生き延びよ」になってきた。風で当選してきた議員らはそよ風程度の逆風でも倒れるのだ。ところで焦点は、民主党代表・海江田万里の動向だ。この馬糞の川流れ現象を、せめて牛糞にできるかどうかは全て海江田の力量にかかっているといっても過言でない。小沢の言うように新党結成が一番の訴求力があり、事実前原、細野らは衆院解散前、海江田に維新の党などとの新党結成を求めたが、応じなかったと言われている。受けていれば橋下も立候補した可能性がある。民主党にとっての不幸は、総選挙惨敗を受けて有能な政治家が代表選に出馬することを尻込みし、二戦級の海江田を党首にしてしまったことだ。夏に「海江田降ろし」が起きたが、不発に終わった。せめて維新などとの間で選挙区調整を進めなければならないが、どのくらいの選挙区で候補者調整ができるかは不明だ。民主、維新は約30選挙区で競合しており、この調整が焦点となるが、12月2日の公示が迫る中で強力なリーダーが存在しないということは痛い。
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