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2014-11-09 01:13

(連載2)消費増税の異常な難しさ

中村  仁  元全国紙記者
 消費税問題を混乱させているもとは、何度か取り上げてきましたように、「2015年10月に再増税、それを2014年末までに決める」とした、民主党政権下での民自公の3党合意(2012年)の無理からきています。「そんなに短期間で5%も上げるのは無理だ」、「年度途中の来年10月の再増税としたので、2014年4月の3%上げから10ヶ月足らずで次の決断をしなければならないのは無理だ」という難問に直面してしまいました。もっとも自民党は「いずれ民主党にとって不利になる話だから、まあ、いいのではないか」という読みで、3党合意にのったのでしょう。
 
 その無理筋の話が自民党にまわってきたわけで、安倍首相に同情します。当時の自民党総裁で、今の谷垣自民党幹事長は複雑な心境でしょうね。民主党が再増税に賛成し、連合も同一歩調をとっているのは、「自民党が困る番だ」という思いからでしょう。わたしは、再増税を半年先送りすれば、2014年の年内決定時期を2015年末まで1年ずらせると、考えてきました。まともな3党合意にしておけば、景気が腰折れしてしまうのか、追加緩和や急激な円安はどんな影響をもたらすのか、政権支持率はどうなるのかなどを、あと1年かけて冷静に見極めることができるはずでした。今は今後の見極めが最も難しい時なのです。
 
 短期と中長期の問題に分ける必要があります。予定通りに来年10月に再増税すると、目先の景気の腰折れ、デフレ脱却の遅れという短期的問題が生じる恐れがあり、政権への批判、支持率の低下を招く一方で、計算上は中長期の課題である財政再建の財源を手にすることになります。これに対して、再増税を先送りすると、目先の景気への影響を切り離すことができる反面、日本はどこまで財政再建に本気なのかという不信感を醸成することになりますね。「国債金利の上昇などの波乱はすぐには起きまい」という指摘に対しては、「巨額の国債発行を続けれられているのは、日銀が異次元金融緩和で国債を買い続けているからだ。それは止める時がくる。その時、波乱がおきる」との反論があります。その通りでしょうね。
 
 どちらの選択にも難問がまとわりついていきます。安倍首相は短期、中長期的な視点で問題を熟考していかねばなりません。再増税を先送りすると、「日本は景気が悪い、あるいは悪くなるからといって先送りする」、「景気がよくなれば、せっかくの好循環をこわすな、といって先送りする」「結局、結論を先送りする」、「それが日本という国だ」という評価が定着するのがこわいのです。(おわり)
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