国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-11-07 19:49

(連載1)ロシアに空から包囲されるヨーロッパ

河村  洋  外交評論家
 去る10月29日付けで『ワシントン・ポスト』紙に「ウクライナ危機を契機にロシアとNATOの緊張が高まるにつれて、ロシア空軍はバルト海および黒海方面からだけでなく、ノルウェーおよびスコットランド沖の北大西洋上の空域からもヨーロッパを包囲している」という記事が掲載された。このことはロシアが東西両前線からヨーロッパのサプライ・ラインを切断できることを意味する。私がこの記事に注目した理由は、イギリス空軍の公式フェイスブックで日頃から「スコットランド上空に飛来するロシアの爆撃機に対してタイフーン戦闘機がスクランブルを行なっている」との情報を目にしていたからである。

 特にこの日にロシアがNATO空域で行なった挑発行為は多発的で大々的なものだった。ベルギーのモンスにあるNATO軍司令部付きのジェイ・ジャンセン報道官は「この24時間以内に行なった我々の観測を通じて、ロシア軍機の数とその一部の飛行計画はこれまでに見られなかった規模だと断言できる」と述べた。それはアメリカ戦略軍が毎年行っている「グローバル・サンダー」演習の時期を見透かしたかのように行なわれた。『エービエーショニスト』誌のリチャード・クリフ校正員は「ロシアは演習に参加した米軍機と同様な長距離爆撃機を飛行させた」と指摘する。

 スコットランドのアレックス・サモンド自治政府首相は上空での緊張をもっと意識する必要がある。スコットランドが連合王国の国防の傘によってロシア航空兵力の侵入に対する必要があるのは明白であり、事態はファスレーン海軍基地を母港とするトライデント戦略ミサイル原潜の問題をはるかに超越したものなのである。西方前線でのロシアの包囲網はポルトガルにまで拡大している。スコットランド空域は、そうした動きを阻止するために重要である。

 興味深いことに、イギリスやノルウェーのような西方前線の国がバルト海および黒海地域の「新しいヨーロッパ」の国々と同様にロシアから直接の脅威を受ける一方で、「古いヨーロッパ」の国々はそうはでない。これはドイツに代表される「古いヨーロッパ」がイギリスや「新しいヨーロッパ」よりもロシアに柔軟姿勢である理由の一つかも知れない。ヨーロッパにおけるロシアの脅威を論ずる際に、メルカトル図法のように標準的な世界地図を見慣れていると東方前線にばかり目を奪われがちである。だがロシアの海軍と空軍はムルマンスク周辺からバレンツ海を通ってスコットランドの海空域に進出することができる。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム