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2014-10-02 06:44

小沢が終盤国会の「消費税政局」化を狙っている

杉浦 正章  政治評論家
 自民党幹部の2人から「最近小沢一郎さんはどうしていますか」と聞かれた。政局がざわついてくると「必殺政局マン」の生活の党代表・小沢一郎が何を考えているかを知りたがるのだ。そう言う問いには「たまにはネットでも検索しなさいよ」と言っている。PRESIDENT Online (http://president.jp/articles/-/13509)に安倍政権をどう倒すかの秘策を全部ぶちまけているのだ。小沢の政局予想は、消費税再増税問題が政局になるというものであり、首相・安倍晋三が政権を投げ出す事態に到ると判断している。小沢は「再増税の判断をする前に騒ぎがおきる」と臨時国会終盤の「消費税政局」を予測しているのだ。この小沢の読みに対抗し「政局化」を回避できる道は、消費税法付則18条を援用して再増税を1年または数年先延ばしするしかないと思う。沖縄辺野古近くの美しい海を臨む宜野座村に、しょうしゃな別荘を建てた小沢は現在72歳。もうご隠居かという話になるが、なかなかどうして潮騒(しおさい)どころか、“血騒”(ちさい)なのだ。民主党政権時代は100人を超える勢力のトップに立って政局を思うがままに動かしていたが、消費増税決定が不満で党を分裂させたのが落ち目の三度笠。現在衆参会わせてたった9人のトップで、無聊(ぶりょう)を託って居るかと思いきや、依然ふつふつと政局への血を騒がせていたのだ。

 今年の初め頃から小沢は「巨大自民党に対抗するには野党が小選挙区で候補を一人に調整して戦うしかない」と唱えていたが、昨今の民主と維新の接近ぶりをみると、この小沢構想がきっかけであるようなのだ。誰も小沢の構想とは言わないが、知恵だけはちゃっかりと頂いているのだ。そこで小沢がPRESIDENT Online で何を言っているかだが、これまたドラスチックだ。まず政局展望について再増税問題がきっかけで安倍政権が倒れると予測しているのだ。「消費税増税に対する影響は、再増税を判断する前、今年中に来る。その結果、安倍政権がどうなるかわからないというのが僕の判断だ。再増税を判断する前に、今年中に騒ぎになる。経済指数とか、海外の情勢とか、いろいろ問題になって、安倍さんでいくかどうかということになる、と僕は思っている」と述べている。安倍が再増税をするかどうかは12月9日頃に出る7-9月の経済指標を見てからということになっているから、その前の臨時国会で政局になるというのだ。「なる」というより「する」ということだろう。おそらく各種経済指標を見て7-9月のGDPが壊滅的になると予測、11月30日に終わる臨時国会の最中に政局に持ち込む戦術だ。小沢は「安倍政権は続かないのではと見ている」と断言している。

 そして総選挙の見通しについて「1年後の来年の夏、あるいは12月じゃないか」と述べ、その前の野党選挙協力体制の確立が必要だと強調する。「野党側が候補者を決めて走らせるには、半年は必要だ。そんなに時間はない。来年の4月の統一地方選挙の後ではもう遅い」と、早期に野党が民主、維新を中心に収れんして、小沢の生活の党もどちらかと合併して、野党2党が候補者を一本化する作戦を明らかにした。そして選挙区情勢に詳しい自らの立場を「実際に候補者の調整や選挙をどうするんだという類の話でお役に立てれば、僕はする。要するに実務だ」と位置づけた。「実務」であって「野望」でないと言いたいのだ。加えて「いまはとても政権は取れないと思っているから、みんな尻込みしているが、政権が取れるとなったら、絶対にみんな出る。再増税を判断する前に騒ぎになる」との見通しを述べた。そして小沢は「政権を狙わない政党や政治家は辞めたほうがいい」と述べた。この部分は民社党委員長・西尾末広の「政権を取らない政党は、ネズミを捕らぬネコと同じだ」のコピーだろうが、意気込みだけは並大抵ではない。

 要するに小沢は野党をあおって、終盤臨時国会を「消費税政局」にして、「アベノミクスの破たん」を突破口に、安倍政権崩壊へとつなげたいのであろう。おりから民主、維新の接近が始まろうとしており、マスコミが連動して盛り上げるだろう。これにどう臨むかだが、現在安倍は「消費税率の引き上げで景気の悪化を招き税収が増えない事態は絶対に避ける」と述べながらも、財政再建重視の立場も強調、まだ心中が揺れ動いている状況だ。国会の議論は、まるで再増税するかしないかに二分されたような状況にあるが、この論議は間違っている。法律が通っている以上「再増税しない」はあり得ないのだ。逆にあい路はここにある。消費税法の付則を活用して、アベノミクスの失速が確定的となる再増税を「延期する」かどうかなのだ。財政再建への意欲を疑われないようにさまざまな歯止めをかけて延期して、海外のハゲタカファンドの来襲を防げば、延期が最善の落としどころとなるのだ。「再増税実施」に踏み切れば、まさに小沢の術中に落ちて「消費税政局」となるのは覚悟しなければなるまい。自民党も首相側近もこのポイントを外すべきではない。ノーテンキに政局を無視する財務官僚などは首を切ってでも、延期を選択、政権を維持すべき時なのだ。
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