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2014-09-18 10:08

(連載1)成長戦略の足元は大丈夫なのか

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 第2次安倍改造内閣の発足後初めてとなる東日本大震災復興推進会議が16日開かれた。安倍晋三首相は「東北を新しい日本創生のフロントランナーにしていく気持ちで全力を尽くすよう」と語り、大震災からの復興を加速させるよう閣僚らに改めて指示した、という。首相はまた同じ日、官邸で開かれた経済財政諮問会議で「デフレからの脱却と景気回復を確かなものとするため、万全を期し、景気回復の実感を全国津々浦々まで届けたい」と経済最優先の持論を強調した。「復興推進と経済成長」―首相の頼もしい限りの大風呂敷だが、自ら「結論を出す政治」「実行実現内閣」という改造内閣の成果を具体的に示してもらいたいものである。

 被災地の現状はいまさら紹介するまでもない。大震災から3年半が経過した今でも25万人近くの人たちが避難生活を余儀なくされている。大津波に襲われた沿岸域は復旧の歩みは見えるが、いまだ更地のままがほとんどだ。都市計画もままならない。首相は会議で「復興はいまだ道半ば。これからは被災地の産業、なりわいを再生させる必要がある」と強調したが、まさしく被災地の現状はそのとおりである。

 被災者にとっては、何度も聞いてきた首相のこの言葉だ。為政者の勇ましい掛け声とは裏腹に、被災地の現状は復興が実感できていない。前政権時代、復興に名を借りた全く無関係な公共事業が堂々とまかり通っただけでない。安倍政権になってからも成長戦略、国土強靭化の路線をこれ幸いとばかりに作成された事業リストは数えきれない。

 「福島の復興なくして日本の復興はない」と大震災以降、歴代首相は声を大にして被災地で語った。復旧・復興の司令部として霞が関を横断する権限を持たされたはずの復興庁だが、復興庁が各府省を束ねて復興計画をまとめたという話は聞かない。事業官庁の意のままに計画が策定され、急を要する事業さえも従来の法律の手続きを踏まなければ前に進まない。首相や担当相がいくら方向付けを約束しても、現実は官僚の采配に任されたままで、復興庁の存在感がまるでなかった。被災地の岩手、福島県選出の担当相が存在感を示す事例は皆無だった。被災自治体の要望を聞き関係府省と調整するようでは、「コールセンター」のそしりを免れない。復興の加速は万難を排してでも進めなければならない。安倍首相の覚悟を聞けば聞くほどそう思う。(つづく)
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