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2014-08-20 11:00

(連載2)消費税10%は延期も

中村  仁  元全国紙記者
・14年4月に8%に引き上げてから間もない14年12月に、次の引き上げをすべきかどうかを判断するのは難しい。実際に、4-6月期に消費税上げの反動減(実質成長率が6・8%減)が予想以上で、7-9月はその反動増がありうるものの、中期的な見通しをたてにくい。海外景気の悪化、対ロ経済制裁による貿易の停滞、アベノミクス効果の中だるみで、来年以降の景気見通しをつけにくくなった。引き上げには2年程度の間隔をあけることが望ましい。

・年度途中の15年10月の引き上げはいかにも変則である。予算編成からいうと、常道を逸している。消費増税(歳入増)およびそれを織り込んだ社会保障予算(歳出増)を予算編成をおこない、年度途中に景気情勢が悪化し、再引き上げを延期した場合、予算が空中分解する。再増税するなら、年度初めの4月実施(前年末の予算編成時の決定)が常識である。政権ははじめから10月実施を先送りするハラではなかったかと、疑いたくなる。

・変則的な決定をしたのは、選挙、政局のヤマを避けること狙いだったと思われる。15年春の地方統一選、16年夏の参院選を避け、その谷間にあたる15年10月の再増税にしたのだろう。再引き上げを15年10月ではなく、16年4月以降(つまり半年延期)にずらす。決定時期は14年12月ではなく、15年12月(つまり1年延期)とするのはどうか。そのほうが景気、経済情勢の見極めをつけやすい。政局、選挙への影響も時間をかけて見極められる。低下気味になってきた政権支持率の先行きをもう少し見守りたいと、安倍首相は思っているのではないか。

 安倍政権の予想が狂ってきたのは、消費税引き上げと、2%というインフレ目標達成の同時進行が裏目にでているからでは、ないでしょうか。デフレ脱却のための異次元の金融緩和で、株や土地などの資産インフレはおきたものの、資産を持っていない人たちにはその恩恵を受けていません。多くの人たちは「増税とともに物価があがり、所得が目減りした。それが消費を抑えている」と感じているでしょうね。それと、対ロシア経済制裁、イラク情勢の悪化などで、国際情勢が経済のマイナス要因になってきました。日経新聞の社説は「成長率の反動減後の復元力が試される」と題して、「消費税10%へ、決断できる環境つくりを」と主張しました。12月の決定までに、そんな知恵がでてきますかね。読売は「消費回復の後押しが必要だ」と書きました。いづれも消費税の再引き上げをあまり急ぐなというのが本音でしょうか。甘利経済相はじめ、政権内部では「ぎりぎりまで消費税の再引き上げに耐えられるかどうか、慎重に見極める」との構えです。目先の見通しならともかく、2、3年先までの見通しを、今年の12月までぎりぎり待たないと、つけられないというのは変ですよね。地政学的リスクを含めた海外情勢、海外経済は悪化するほうに向かっているように思われます。12月の再引き上げ決定は難しいとみるのが正解でしょうか。(おわり)
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