国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-07-15 11:17

(連載2)問われる政治とメディアの関係

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 番組の中で国谷氏は、政府が閣議決定した集団的自衛権行使の新要件にまつわる拡大解釈の可能性、他国の支援要請に対する歯止め、憲法解釈との整合性などについて、「国民の不安、違和感が強い」ことを挙げて食い下がったが、菅氏は「新3要件」の「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」を繰り返すだけであった。素直に「NHKもやるものだ」と感心した。と同時に、同席した政治部記者の遠慮がちで、もじもじした質問が対照的だった。読者が飛びつくようなニュースを派手な見出しで誘客するのが商売の写真週刊誌だから、話半分としても、中身はなかなか真に迫っていた。籾井会長就任以来の不規則発言が国会でも取り上げられるなどして、NHKと政権の緊密な関係を大多数の国民が知って呆れ、「さもありなん」というわけだ。そんなわけで、NHKがまたまた、ヤリ玉に上がってしまったということか。

 ところで話は変わるが、7月3日の「クローズアップ現代」に菅官房長官が出るというので、私はてっきり2日前の集団的自衛権行使の閣議決定と首相会見の〝不評〟を一気に局面転換する北朝鮮カードを官邸が切ったと思った。なぜなら、この日午前、安倍首相が珍しくぶら下がり記者の前に立ち「北朝鮮に対し日本が独自に科している経済制裁の一部解除を決めた」と明言していたからだ。

 1日の首相会見は期待に反してわずか25分、それもうち10分を首相の冒頭発言が占め、会見の質疑もかみ合わず、首相の持論だけ独り歩きしたような会見だった。集団的自衛権行使に対する国民の疑問、不満、不安は多い。そんな国民の矛先を「拉致問題」でかわそうともくろんだのかと、私は官房長官の番組出演の意図を深読みしたのである。周知のように、安倍政治は〝変幻自在〟だ。アベノミクスで国内の異論を黙らせただけでなく、国際舞台でも「バイ・マイ・アベノミクス」を売り込んだ。2020年の東京オリンピック招致決定で見せた首相の自信満々の演説。首相就任以来の外遊は記録的な多さだ。東シナ海、南シナ海における中国の覇権行動を意識した安倍外交は、国内の外交・安保論争を飛び越えて、広がりを見せた。

 内政は1強多弱の国会で「健全野党」をなびかせている。そして、集団的自衛権問題はすったもんだであったが、最後は公明党との与党合意で幕となった。「外遊」と「与党合意」で安倍政治は進んでいるかの印象さえある。靖国参拝を巡って米政府が「失望」と批判した今年初め、首相側近は「我々の方こそ失望した」と応酬した。側近は「個人的発言だ」と撤回したが、側近の失言連発は政権のおごりとも批判された。琉球新報記事に対する訂正要求やフライデー事件は、安倍政権の強気な政治がもたらしたものなのか。安倍人気を曲解した〝驕り〟は政権の足元をすくう。そうでないなら、国民が分かるように説明してほしい。NHKも隠しだてしないで真相を語るべきだ。首相が再三強調するように、政治は国民の安心、安全、幸せを守るものだ。その原点を忘れたような政治を国民は求めていない。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム