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2014-06-14 17:37

(連載1)景気判断 虫の目か鳥の目か

中村  仁  元全国紙記者
 黒田日銀総裁は6月13日の金融政策決定会合後の記者会見で、「消費増税の影響を乗り越え、夏以降は、景気は回復に向かう」と述べ、2%の物価上昇率目標の達成に自信をみせたと、新聞は伝えています。外野席では、デフレ脱却は成功すると安倍政権の応援団が言えば、金融政策だけで経済再建はできないとの批判が一方でくすぶり続けています。どちらが正しいのでしょうか。結論から申し上げると、世間では景気判断で目先の動きばかり必死に追う傾向がますます強まっており、地面をはいつくばるような、いわば虫の目で細かな経済指標を分析しています。マネー市場が一つ一つの経済、景気指標に敏感に反応するため、政府、日銀ばかりではく民間のエコノミストも、顕微鏡でのぞくようなこと細かなデータを尊重し、一喜一憂しています。上空を舞う鳥の目のように、大きな視野で経済、景気の流れを把握すべきではないでしょうか。

 日経経済新聞の14日のコラム・大機小機に「過去も続けていた金融緩和がなぜ今回、有効だったのか。13年度の法人税収は1兆円も上振れしよう。利益が増えた企業間の人材獲得競争で人手不足になっている。名目賃金も1%ほど上がっている」と、異次元の金融緩和策が好結果をもたらしている多くのデータに注目しています。「へー、そんなことまで」と思わせるのは、「不況の影響が大きい自殺者数はずっと3万人を超えていた。昨年から大きく減り、今年は前年より1割減となっている」そうです。外部のエコノミストの執筆にせよ、日経新聞自身が喜びそうな内容ですね。見出しも「政策への信頼が成長の源」で、政府、日銀を信頼することこそが成功のカギとなるとも言い、そこまで言われると日銀も面映いでしょう。「指標の好転は大規模な財政支出や、海外投資家の日本株投資などによる」との日銀批判論者に対して「なお異次元金融緩和に否定的な意見がある」と、切り捨てています。随分と気の早い結論を出すものです。

 実名を伏せて本音をぶつけあう大機小機のコラムをわたしは愛読しています。このような日銀信者に対して、10日前に「岩田副総裁が不気味なことを言っている。成長戦略に基づく政府の施策、民間の取り組みが停滞すると、インフレ下における低成長をもたらす可能性があるという」との、批判がすでに載っています。「金融政策だけで潜在成長力を引き上げられない」との主張です。このコラムのほうが客観的、中立的な見方だと思いますね。かりに政府、日銀の目標どおり、物価が2%、さらに消費税が5%(2回分)上がったら、家計にマイナスの効果が強まるでしょう。中国のバブル崩壊は不可避との予想もあります。経済がグローバル化しているのに、日本の国内要因だけで景気が決まるということはありえません。

 6月5日、欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を0・15%に引き下げたほか、民間銀行が中央銀行に余剰資金を預けるとマイナスの金利を適用することにしました。異例中の異例の金融政策です。ユーロ圏は財政・債務危機はなんとか終息したものの、ゼロ成長、高い失業率、低インフレの長期化など、デフレの懸念が強まっています。新聞は「金融政策でユーロ安を進めようとしている」とか「国債を大量に購入している日本、米国のような本格的な金融緩和にいずれ追い込まれる」などと伝えています。(つづく)
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