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2014-06-09 04:57

「大きな家」論の前原戦略を分析する

杉浦 正章  政治評論家
 橋下維新と将来合流する可能性について、民主党元代表・前原誠司が「100%だ」と発言した事が野党に衝撃となって走っている。すわ民主党分裂かと受け取れかねないだけに、その突出性の政界へのインパクトは大きい。ただし政治家の発言は総合してとらえ、分析するべきである。前原は再建民主党中心に再編する「大きな家」論を唱えており、当面不満分子を引き連れて離党再編への動きはしまい。この点民主党分裂糾合を目指す維新共同代表・橋下徹と結いの党代表・江田憲司の思惑とは異なる。6月7日の読売テレビにおける前原発言を録画して分析したが、「野党再編が動き出すことに期待感を持っている。小選挙区制で野党がバラバラでは自民党を利するだけだ」と前置きして、「大きな家を造るくらいの気持ちでないと政権政党にはならない。民主党を含めた野党再編をしなければならない」と何度も強調していた。そして橋下維新と将来合流する可能性について聞かれると「100%だ」と答えたのだ。この「大きな家」論は前原が最近となえだしたものであり、民主党がまず全体で体制を刷新して整え、その民主党を中心に野党の大連合を達成しようというものだ。

 「大きな家」論はまず体制内改革を達成するところに主眼が置かれている。その線上に「海江田降ろし」が重要ポイントとして存在するのだ。来年9月の代表選を1年間前倒しして、海江田を岡田克也か前原に交代させ、新体制を造った上での野党再編なのだ。だいいち代表選を実施して海江田の首をすげ変えてから離党などという戦略は荒唐無稽(むけい)でしかない。ただ、問題は山積している。前原が党内右派系をまとめきれるかどうかである。前原系は約20人であり、これに細野豪志グループ、野田佳彦グループや、集団的自衛権容認の長島昭久らの政策グループを引き込めるかどうかである。野田は別のテレビで「再登板は考えていない」と述べて、現段階で意欲は見せておらず、動きも慎重だ。細野は再編路線であり、同調する可能性は高い。長島と前原は集団的自衛権への対応で完全に一致する。問題は岡田が党分裂論ではなく党再建論であることだ。ただ若手を中心に進んでいる代表選前倒しの署名活動は党内右派の多くの共感を呼びつつある。

 一方維新の橋下は、読売テレビで「民主党の一部とタッグを組みたい」と言明、あくまで左派を除外した右派との合流を強調した。結いの江田も「民主党の考え方が一致した方々とやれるに越したことはない。民主党の改革派は行動してほしい」と、やはり右派との合流論だ。前原はさる5月24日の橋下、江田との3者会談で「自主憲法制定を外せば広がる」と述べ、石原を切るように持ちかけている。これによって維新分裂となっただけに、橋下としては前原をなんとしても取り込んで、野党第1党を達成して展望を開きたいところだろう。数だけを確保するための民主党全体との合流となれば、旧社会党系など左派を抱えて、新党を作ってもすぐ路線対立が発生して分裂しかねないということだ。

 この「大きな家」の前原戦略と、民主党「食いちぎり」戦略の橋下路線とはなかなか交わりにくいと見なければなるまい。これは「海江田降ろし」の成否とも密接につながることである。民主党代表・海江田万里は維新の分裂で野党第1党を維持できたことでほっとしていると言われる。野党第2党に転落したら海江田降ろしが本格化すると踏んでいたのだ。しかし、この見方は甘い。自らのリーダーシップの無さは衆目の一致するところであり、党の一致団悦を思うなら、ここは潔く身を引いて、後進に道を譲るべき場面だからだ。それさえ実現すれば民主党の細分化は避けられるのだ。こうして民主党内のチキンゲームは週明けから抜き差しならぬ段階に入りそうだ。最大の山は6月20日の両院議員総会に絞られつつある。弾みで何があってもおかしくない事態ではある。
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