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2014-05-15 12:10

(連載1)軍事力がのさばる時代への備え

中村  仁  元全国紙記者
 ロシアがウクライナからクリミヤを奪い、次は中国がどう出てくるかと思っていましたら、尖閣諸島ではなく、南シナ海で海洋権益を拡充する動きに、やはり出てきました。油断のならない時代になってきましたね。ロシア、中国が世界のかく乱要因になっているだけではありません。アジアのタイでは、外国の侵略ではなく、自壊作用で国が二つに分裂する騒ぎです。いくつかの共通項があるように見えます。(1)軍事力が物をいうケースが増えてきた、(2)国際社会でも、国内社会でも、法の支配が脅かされることが目だってきた、(3)米国の世界秩序の維持能力が低下してきたが、それを批判しても始まらない、(4)即効性はなくても、経済的な相互依存関係を深化させ、重層的な同盟関係を構築するしか手はない。このような感じではないでしょうか。

 一方、あちこちで混乱が起きると、「出口がみえない」という言葉を、最近よく聞かされます。朝日新聞の社説「タイの混迷、国民融和の道筋探れ」(5月9日)は、「タイの政治危機に出口が見えない」が書き出しの一行目です。ウクライナでも「紛争解決の出口がみえない」と、多くのひとがいいます。ウクライナでも、南シナ海でも、尖閣諸島でも、ロシアや中国の長期戦略を考えると、「出口がみえない」領有権争いの時代にますます入り込んでいくのでしょうか。わたしは「出口がみえない」のは当然だと考えます。わたしたちは「出口がみえない」どころか、紛争が各地で多発する時代の「入り口」に入ったばかりですから。

 新聞メディアは何を考えているのでしょうか。明らかに「これだ」という解決策が見当たらないため、特に社説は書き方で苦労している姿がありありです。日経新聞の「一段と混迷深まるタイ政治」(5月8日)の締めくくりの文章は「与野党とも混迷の打開に努めてほしい」でした。当たり前すぎて、何の参考にもなりません。読売新聞の「タイ首相失職、混乱を助長する憲法裁の判断」(5月9日)の締めは「一刻も早い政治の正常化が必要だ」です。分りきったことです。本末を転倒させ、逆に一行目に「一刻も早い政治の正常化が必要だ」と書いて、そのための具体策を説明するほうが、文章としてはよいのです。

 朝日新聞の「ウクライナ、混迷を長引かせるな」(5月2日)の結論は「国際社会は対応を急がねばならない」です。毎日新聞では「タイ首相失職、非常事態の再来を招くな」(5月9日)で「国民の融和に向けて理性的な政治決着の歩みに踏み出すことを望む」というのが結論です。そうできないから、まわりが困りはてているのです。メディアは目まぐるしい動きを追うのが精一杯で、「なるほど」と言わせる掘り下げた提言がなかなかできないのですね。こういうときに限って、紋切り方の社説の表現が乱発されます。(つづく)
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