国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-04-24 14:19

(連載1)中国は自国の行方が分らない

中村  仁  元全国紙記者
 最近、新聞を読んでいて、国防省や米軍首脳のブレーンも務め、米国を代表するとされる歴史家、故アーネスト・メイの中国論が目を引きました。「中国がどこへ向かうのか、まったく予想がつかない。中国自身にも分っていないだろう」という言葉です。特に後半の「中国自身にも分っていない」という部分は鋭い指摘だと、思いました。この引用は、日経新聞の解説コラムから借りてきました。日本メディアの中国報道は、「富国強兵」、「海洋権益の拡充」、「共産党の支配体制の死守」などを国の方針にし、ある方向に向かって、習近平・一極体制が国の操縦かんを握っているというイメージで多くが書かれています。多分にそうした面はあるにせよ、中国が問題を起すたびに、こうした見方をもとに、中国批判を繰り返していると、誤った中国観でこり固まってしまうのではないか、と思います。

 変化が激しいこの時代に、どこの国も自分の国がどこに向かっているのか、本当のところは分っていません。米国だって98年にリーマン・ショックによる金融危機が発生し、世界全体の危機をもたらすとは予想もしていなかったでしょう。日本もデフレから20年も脱却できないとは、考えてもみなかったでしょう。それでも、国内では政治、経済、言論などの次元で多様な議論、論争が公開される形で繰り広げられ、国をどういう方向に持っていこうとしているのか知ることができます。透明性があります。これは特に民主主義国家での話です。

 ロシアはどうでしょうか。言論の自由がある民主主義国家ではなくとも、プーチン大統領の独裁政権ですから、ウクライナ紛争をめぐり、何を考え、どうしようとしているのか、かなり分ります。しばしば欧米の首脳と電話会談もするので、本音はともかく、ロシアの方向性をある程度、予想できます。北朝鮮は虚偽の説明ばかりします。虚偽であるけれども、本当はこういうことなのだろうと推測できます。

 中国になると、様子が変わってきます。強がりばかりみせたがる共産党や政府の公式見解、居丈高な報道官の記者会見などを参考にするにしても、何しろ言論の自由がない国なので、権力構造の内部で、どのような議論が本当のところおこなわれ、国や個々の政策をどう導こうとしているのか、さっぱり分りません。他の諸国の「自国の行方が分らない」というのと、意味がまったく異なります。しばしばチャイナ・ウオチャーが自分こそ内情を知っていると解説します。その確度のレベルはどんなものでしょうか。(つづく)

 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム