国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-04-15 11:22

(連載2)複眼的に考えるべきエネルギー政策

中村  仁  元全国紙記者
 わたしがエネルギー多神教というのは、複数の視点からエネルギー政策を考えていかなければならないという勧めです。エネルギー源の多様性としては、火力(石油、天然ガス、石炭)、原発、水力、太陽光、風力などの組み合わせです。それぞれに重要な長所、短所があり、補完しあわねばなりません。今、火力が電源の9割を占めているのは異常で、温暖化対策に逆行します。再生エネルギーの比率を2割に引き上げるには、太陽光だけなら東京・山手線内の10倍の用地が必要です。風力なら2万基がいるという試算もあります。 もっと全体的な多様な視点としては、国際情勢(エネルギーの安全保障、安定供給)、自給率の引き上げ、経済成長との関係、貿易赤字(対外的な支払い)の抑制、国内の経済、産業活動への影響、環境への影響、省エネルギー政策の効果と限界などいろいろあります。

 ここで新聞論調をのぞいて見ましょう。朝日新聞は社説で「これがメッセージか」という題で「もう原発に依存できないことは電力会社も分っているはずだ。原発は巨大事故のリスクからまぬかれない。この計画は安倍政権が続ける焦点外し戦略である」といいます。毎日新聞は「これは計画に値しない。原発など電源別の数値目標は盛り込まれていない」と指摘しています。かりに数値を盛り込んでいたら、根拠のない無責任な数値だ、批判していたことでしょう。いっそのことこうしたらどうでしょうか。「原発はゼロにする。こうすれば、経済、産業活動をやっていける。コストも適正水準である」という提言案をだしたらどうでしょうか。政府計画を論評するのではなく、自分たちの構想を議論してもらったらどうでしょうか。

 読売新聞は「原発活用は現実的な戦略だ。正常化する大きな一歩である。再稼動も明記した」と評価しています。気になる点はあります。昨年10月の社説では「貿易赤字の主因は、火力発電所向けの燃料輸入の急増にある」と、書きました。今回は「追加燃料費は年3・6兆円にのぼり、巨額な国富流出が続く」と、表現が変わっています。朝日は「国富流出との言いぶりには、各方面から疑問の声があがっている」と、ポイントをついています。

 貿易赤字の長期にわたる拡大をめぐり、大きな議論が始まりつつあります。貿易赤字は、円安による輸入代金の増大、円安下でも伸び悩む輸出などによるのであり、燃料の数量は節約により減り気味との分析がみられるようになりました。貿易赤字と原発停止の関係について、客観的、中立的に検証すべき時でしょうね。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム