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2014-01-27 06:54

「原発ゼロ」で現れた細川・小泉の馬脚

杉浦 正章  政治評論家
 国家の最高指導者が政権を長い間離れると、政治判断もそこいらの床屋談義のおっさんレベルになることを都民は知りつつあるのではないか。細川護煕も小泉純一郎も「原発即ゼロ」への道筋を示さないどころか、示すことができないのだ。だから二人とも候補者討論会などを拒否する。突っ込まれてしどろもどろの醜態を見せてはマイナスになるからにほかならない。選挙は逃げては駄目だ。その発言内容は、戦後一時期を風靡(ふうび)した社会党の「非武装中立論」そっくりで、聞けば聞くほど空しくなる。筆者があらゆる報道機関に先立って自民党世論調査で舛添要一リードを報じたのに続き、毎日、朝日、日経などの調査もこれを裏付けて、舛添が勝ちそうな様相が出てきた。二人の元首相は戦後政治史に残る大恥をかきそうだ。「スローガンだけの選挙は、さすがに都民もうんざりしている」と官房長官・菅義偉が述べているが、恐らく新聞の世論調査の情報は裏からとっくにごますり記者が伝えているから、背景には自信があるのだろう。たしかに選挙告示以来の二人の「原発ゼロ」発言を分析すれば、実現への工程はそれこそ「ゼロ」であり、無責任の極みであることが分かる。

 細川は1月26日「原発が止まっていてもこれだけ経済が回っているわけだから、原発再稼働をやめて自然エネルギーに切り替え、自然エネルギー大国の先頭を東京が進まなければならない。自然エネルギーによって成長を進め、その果実を雇用や福祉にふりむけていけば、日本は多くの国からすばらしい国だと評価されると思う」と訴えた。さすがに殿様は、衣食住に何の心配も無い生活を送っておられるものとみえて、電気料金の大幅アップであえぐ庶民や中小企業の実情などご存じないようだ。マリーアントワネットの「パンがなければケーキを食べればよい」というレベルに等しい。「これだけ経済は回っている」というが、細川は実態はアベノミクスで無理して回しているという初歩的経済知識すら持ち合わせていないのだ。アベノミクスはすべて原発の早期再稼働が前提の構図なのだ。電気代は原発が即時ゼロとなれば韓国や中国の3倍になるという試算がある。これでは経済は「回らない」のだ。現にドイツは太陽エネルギー買い上げで電気料金が高騰、買い上げ制度は破たんしつつある。世界の潮流は死亡者ゼロの福島事故などどこ吹く風であり、原発新設ブームだ。現在420基が動いているが、これが近い将来600基になる。

 日本は、原発の寿命を考えると、このままでは2030年で現在の半分、2049年には本当にゼロとなる。捨てておけば原発ブームに乗り遅れ、安価な電力を確保出来ない構図なのだ。それを「即ゼロ」にしたらどうなるか。そうなればただでさえ低下している産業競争力などは吹き飛び、まずスーダン並みの「最貧国」が待っている。小泉も「原発ゼロで日本は発展できる。まずゼロにして、後は知恵者が知恵を出す」と発言した。「知恵者が知恵を出す」は首相がよく使う言葉だ。問題を下に回すのに便利だからだ。この発言の本質は、小泉が首相時代に使った言葉だけを覚えていて、自らの原発推進路線の寄って立つところを知らないまま発言しているということだ。「即ゼロ」は日本経済に大打撃となり、株価は一転して暴落、「平成の原発大恐慌」の事態になるのは火を見るより明らかだ。小泉は「日本人は大きな目標を掲げると達成しちゃう」と強調する。達成するかも知れないが問題は達成までの期間だ。最短20年かかるとして、即ゼロでその間食って行けるかのと言うことだ。絶対に無理であり、無責任だ。極右・石原慎太郎は大嫌いだが、生涯に一つだけいいことを言った。それは「暇を持て余した小泉が馬鹿なことを言い出した」だ。

 小泉の演説方法をつぶさに分析すれば、かつて自民党を「敵」と位置づけ、自らを際立たせたのと同じで、「原発推進」を敵に位置づけて一点突破を図ろうとしている姿が浮き彫りにされる。しかし、マスコミは朝日を含めて社説で脱原発一点集中選挙に反対している。紙面構成も原発は各種政策のうちのワン・オブ・ゼムの扱いだ。27日付の朝日の世論調査では、最も重視する政策は「景気や雇用」29%と「医療や福祉」25%が多く、ほかは「原発やエネルギー」14%、「教育や子育て」12%といった順番である。まさに小泉劇場は笛吹けど踊らずで、最大の焦点になっていない。日経でも同様の傾向が出ている。小泉は郵政選挙の時のあの芝居じみた身振り手振りで人を引き寄せようと懸命だが、まさに老醜をさらしているだけだ。誰か止めてやらないと、懲りずに“踊りを続ける。こうした二人の元首相の発言を見てくると、エネルギー政策の本質を理解しないまま、都民の低い民度、言い換えれば浮動票によって左右される民度を狙って弾を撃っていることになる。戦後社会党が、河上丈太郎も、成田知巳も、土井たか子も、日本人の戦争アレルギーと平和は天から降ってくるという安易な安保感覚を狙って「非武装中立」などという荒唐無稽な構想を打ち出し、結局党をつぶしたのとそっくりだ。元首相二人の発言はいくら言いっ放しの街頭演説とは言え「空想性虚言」に満ちており、無責任の極みであり、国を潰す妄想でしかない。幸いにも今回の選挙は、内閣官房副長官を長年務め、7人もの内閣総理大臣を補佐した石原信雄を、世界都市博覧会中止を公約にしただけのタレント青島幸男が下したような事態は起きにくいとみる。朝日の調査も舛添がリードし、これを細川と宇都宮健児、田母神俊雄らが追う構図だ。これはとりもなおさず「即原発ゼロ」が当否を分けるテーマとなっていないことを物語る。
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