国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-12-09 15:33

(連載)防空識別圏へのミラーアタック(1)

緒方 林太郎  前衆議院議員
 中国の設定した防空識別圏については、色々な外交上の問題が生じています。昔から防空識別圏の問題というのは存在していて、例えば、かつて与那国島の一部が台湾の防空識別圏に入っていたといった話もありました。ところで、私は(斜め45度くらいの)ミラーアタックでこの防空識別圏に対して、日本もある措置を講ずればいいと思っています。それは日中間の大陸棚の問題です。これは昔から考えていたことなのですが、検討に値するのではないかと思います。

 今、東シナ海においては、日中間で大陸棚の問題が生じています。日本は中間線を主張しており、それを堅持しています。中国は、(既に国際法の世界ではスタンダードではない)自然延長論を主張して、沖縄トラフ(中間線よりも日本よりの部分で海底が沈んでいる場所)までが自国の大陸棚だと主張しています。自然延長論というのは、基線から自然に大陸棚が継続して伸びているところまでがその国の大陸棚だという主張でして、1970年代頃までは通説でしたけど、その後、中間線の方が通説になっています。なお、中国はベトナムとの間では自然延長論ではなく中間線を主張しており、ダブルスタンダードなのですが、それはここでは踏み込みません。日本はかねてより、中間線のところから一歩も譲っていません。たしか、福田内閣の時だったと思いますが、当時の谷内外務事務次官(初代NSC局長と目されている方)が相当に頑張って中国を押し返しました。中国は中間線を認めていませんが、かといって中間線を越えて出てくることはしていません。日本側関係者は本当によくやっていると思います。ここでの外務官僚の頑張りは、国民の皆さまから評価されていいです。さて、ここで日本の国内法制度がどうなっているかを見たいと思います。ベースは「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」です。

第2条(抜粋)は次のように定めています。 第二条  我が国が国連海洋法条約に定めるところにより沿岸国の主権的権利その他の権利を行使する大陸棚(以下単に「大陸棚」という。)は、次に掲げる海域の海底及びその下とする。
一  我が国の基線から、いずれの点をとっても我が国の基線上の最も近い点からの距離が二百海里である線(その線が我が国の基線から測定して中間線を超えているときは、その超えている部分については、中間線(我が国と外国との間で合意した中間線に代わる線があるときは、その線及びこれと接続して引かれる政令で定める線)とする。)までの海域(領海を除く。)(略)

 さて、カッコが多くて読みにくい法律ですけども、大体、こんな感じで読んでください。(1)本来は200カイリまでが日本の大陸棚。(2)他国の大陸棚とぶつかる時は中間線。(3)ただし、別途合意がある時はその線。私はこの法律は問題があると思っています。それは、日中間のように、双方が200海里まで主張すると大陸棚がぶつかっていて、かつ、現時点では合意がない場合は中間線となっている場合、日本は国内法上マックスで中間線までしか主張できないのです。とすると、中国は沖縄トラフまで主張しているわけですから、仮に国際海洋法裁判所等に出ていった際、下手をすると中間線と沖縄トラフの間(したがって、中間線よりも日本側)で解決が図られる可能性なしとしません。(つづく)

 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム