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2013-10-17 17:55

結婚の神聖

渡部 昇一  上智大学名誉教授
 男女は放っておいてもくっつくものであることは、犬を飼った人にはよくわかることだ。私も子供の時から自分の家の雄犬がどういう行動をするか見ていて知っていた。それで大人達が「野合」という言葉に軽蔑の念を込めていた理由も自然に了解できたし、それと区別する「結婚」の意味も悟ったと思う。結婚はカトリックでは秘蹟の一つとして重んじられている。日本では仲人を立て、式を行って「野合」でないことを世間に示して来た。結婚を重んずることが、とりもなおさず家庭を重んずることに連らなっている。そして家庭と家族は法律によって保護されている。

 しかし男女の間のことだからそこからずれた行為もある。結婚している者が配偶者と別の相手と関係すれば姦通ということになる。昔はそれに刑罰が規定されていたが今はなくなった。しかし姦通でも子供が生まれる。法律で認められた二人以外に生れた子供は非嫡出子、通常はよく私生児とも言われることがある。父親が賢明で、しかも財産があれば、それを分与して、自分の死んだあとでゴタゴタが起らないようにすることもできよう。

 しかし不倫して、非嫡出子を持った男がそれに対する配慮なく死んだらどうなるか。残された子供たちの間で相続問題が起りうる。かつては法律は結婚を、つまり家庭を守る立場であったから、非嫡出子に相続権はなかった。しかし現実にそういう子供が居るのは事実であり、全く遺産を与えられないのもかわいそうだということで、非嫡出子も結婚から産れた子供の半分の割合にするという法律に変わった。結婚による家庭制度をも尊重すると共に、非嫡出子をも配慮するという妥協案で、現代の「大岡裁き」として評価する人が多かった。ところが最近の最高裁では、十数人の判事達が揃って非嫡出子の相続権を、法律婚の子供と区別しないことにした。結婚や家族制度の意義を完全に無視したもので、それに対して一人の判事の反対もなかったというのが凄い。

 G.K.チェスタトンは「横の民主主義」、つまり現在生きている人たちだけの民主主義と、「縦の民主主義」、つまり先祖の意図や子孫のことも考える民主主義があることを指摘した。「横の民主主義」は今生きている人たちだけの独裁になる危険があると警告している。今回の最高裁の一致した判断は、日本人の先祖の意思や子孫のことを考えない独裁ではなかったろうか、と不安に思われてならない。諸外国の婚外子の割合が五十パーセント前後、日本はたった二パーセントということも最高裁の判事たちは重視しなかったようである。
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