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2013-10-12 10:13

(連載)TPPの国内対策(2)

緒方 林太郎  前衆議院議員
 気をつけなくてはいけないのは国内対策です。多分、既にオファーをしている以上、一部議員の関心は国内対策になるでしょう。消費税増税で、与党議員は気が大きくなっている感じもします。「国内対策、国内対策」という声が大きくなるのは悪いことではありませんが、便乗して変なものを出してはいけません。具体的にはウルグアイラウンド対策6兆円の轍を踏まないということです。一番大きく出ようとすると、撤廃した品目の国内生産量×その品目の関税率をすべて補助金で賄うというアイデアになります。これは関税撤廃で下がると思われる価格分をすべてカネで解決するということです。

 古い話ですが、これは1992年の欧州共通農業政策改革と似ています。当時、欧州は価格支持政策を取っていましたが、1992年にその支持価格を下げる代わりに、その削減分全額を直接支払いにしました。ウルグアイラウンド交渉での関税引き下げ等を見据えた措置であったと思います。しかし、その後、2000年改革では支持価格の引き下げの1/2しか直接支払いで面倒を見なくなります。その後、2004年には直接支払いをデカップリング(生産と補助を切り離し、固定支払い的な政策に移行)、直接支払いも削減し(農家への金銭補助ではなく)農村開発に向けるといった方向で、どんどん改革を進めています。

 上記のような「国内生産量×関税率を全部補助金で保証」という気の大きな補助金政策というのは、欧州と比較すると20年遅れです。さすがに3周回遅れの政策を取るというのは宜しくないでしょう。日本の財政事情がそれを許すとも思えません。

 1992年CAP改革頃からずっと欧州の共通農業政策には関心を持っていますが、共通農業政策がEU予算の重荷になっているが故に、何とか生産促進的な補助金を減らしていきながらも、全体として農業を守っていくという本当に明確な方向性を感じることが出来ます(政策としていいかどうかはともかく)。日本も国内対策をするなら、こういうヴィジョンが欲しいなと思うわけです。中山間地が多いので、生産を支えようとすると欧州ほどのデカップリングは難しいでしょうが、欧州の共通農業政策をよく研究して、歴史的に見てどの時点の改革くらいなら今の日本でも飛びつけるかということを検討するのは意義あることです。(おわり)
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