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2013-10-10 07:04

このままでは小泉進次郞が駄目になる

杉浦 正章  政治評論家
 イスラエルに「父親が酸っぱい葡萄を食べたので子供の歯が浮く」という諺がある。日本の「親の因果が子に報い」だが、自民党期待の星・小泉進次郞が、父親・純一郎の発言に理解を表明した。「原発は必要」と述べてきた信念を転換して、「歯の浮く」ようなおべんちゃらを「原発ゼロ」に対して述べ始めたのだ。若いうちには弁が立ってマスコミにチヤホヤされたものの、結局巧言令色が露呈してはしごを外され、その後鳴かず飛ばずになった政治家は五万といる。小泉進次郎の「原発ゼロへの傾斜」はまさにその危険を容易に予言できる。進次郞は父親の「酸っぱい葡萄」の重圧に抗して、復興庁の政務官として、いまこそ「脱原発神話」をはねのけるべきときだ。それなくして、「日本の首相候補」などとはおこがましい。小泉純一郎の「原発ゼロ」発言に対する政界の反応を分析すると、総じて「無視」が潮流だ。わずかに支持する発言は「三馬鹿大将」とは思っていても言わないが、3人の政治家だけだ。まず元首相・菅直人だ。小選挙区で落選し、比例区でやっと当選したことは、自らの「原発ゼロ」発言が大きく影響しているなどとはつゆほども思わず、小泉発言を礼賛している。10月8日ニューヨークで「小泉発言は脱原発に向け、政府への大きな圧力になりつつある」と、誰も知らないのを幸いに大うそをつき、「原発が供給していた電力は、再生可能な自然エネルギーで代替できる」と科学的無知をさらけだした。

 ついで、哀れにも栄光の夢が過ぎ去ったことに気付かない小沢一郎。「冷静に日本を考える人であれば行き着く結論」だそうだが、「原発ゼロ」で当選ゼロの深淵を見た日本未来の党の「行き着いた結論」を早くも忘れたようだ。こまっちゃくれのみんなの党代表・渡辺喜美は、「危機を共有する政治家」と礼賛したが、自分の党の危機的状態は棚上げでは済まない。一方、政府自民党は官房長官・菅義偉が「言論は自由」、幹事長・石破茂も「再稼働は不動」と、まるで純一郎を相手にしていない。これは正しい選択だ。相手にするほど小泉のペースにはまる戦いなのだ。とりわけ首相・安倍晋三は、カラスが騒いでいる位の反応でいい。まともに反応してはいけない。こうした中で、党青年局長から復興政務官になった進次郞が7日、父親に理解を示してしまったのだ。まず「私は政務官だから安倍政権の一員」と前置きした。後に続く発言を見ると、「一員だから再稼働」ではなく、「一員だから思っている事を言えない」に比重がかかっている。その上で「日本ってやっぱり変わるときが来たかなと、誰もが思ったと思う。何か釈然としない気持ちが国民の間で、実は今はまだ景気が回復しそうだから黙っているけども、このままなし崩しにいって本当に良いのか、という声が私は脈々とある気がする。自民党がそれを忘れたら、愛知県で4年前に起きたように、((衆院選小選挙区の当選者が)ゼロになりかねない。私の言わんとしているような思いはじわじわと(皆さんが)感じているのではないかなと思う 」と述べたのだ。

 明らかすぎるほど父親に同調して「なし崩しの再稼働」への反対を訴えようとしている。朝日新聞や報道ステーションなど「原発ゼロ」派ががやんやの喝采で報道したのは言うまでもない。しかし進次郞は、これまで原発有用論の先頭を切っていたのだ。「これまで歯を食いしばりながら日本国内で耐えてきた企業が、原発ゼロを機に一気に海外に流出していくだろう。日本の産業は空洞化する。そのような事態を招かないようにするのが政治の責任なのだ」と発言している。この“変節”の心理状態を読めば、その先には大衆にこびを売るポピュリズムが存在する。父親と全く同じパターンだ。純一郎は「原子力村」から一番頼りにされた首相の1人であり、在任中の原発推進はもちろん、国会答弁でも「日本の全ての原発はいかなる津波が起こっても問題ないように設計されている」と発言している。

 まさに親の酸っぱい葡萄で歯を浮かせている姿が進次郞だが、やはり自らの発言のように「歯を食いしばり、政治の責任を果たす」ところに戻るべきだろう。とりわけ進次郞は復興政務官だ。職務として最初に為すべき仕事は16万人の避難者を一刻も早く安定した居住地と仕事に戻す事だ。それには、マスコミに踊らされて民主党政権が設定した「年間1㍉・シーベルト」の除染方針を撤回することだ。日本人が浴びている放射能は、太陽など自然に降り注ぐものが1.5㍉・シーベルトであり、1㍉・シーベルト達成などは科学的にも極めて無意味で、根拠のない設定だ。進次郞はこうした問題にけりを付ける方向で国民を説得するのが先決であり、愚かな父親に気を遣っているひまはない。政府自民党の首脳も、このまま進次郞を野放しにするのは、やがては手の付けられない段階へと進む。河野洋平に影響を受けた河野太郎並みのエキセントリックな政治家になってしまうだろう。石破は「小泉進次郎さんがいれば、自民党青年局が光り輝き、小泉さんがいなくなっちゃうと光り輝かないというのは、どうにもならない。小泉さんの後の党青年局長は、誰がやったって、やりにくい」などと、いまだにチヤホヤしているが、この姿勢は本人のためにならない。厳しく教育すべきなのが幹事長の役目と心得よ。
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